カテゴリー: 家族

家族のことを書いた話は、どれも胸に刺さります。当たり前すぎて気づかなかった愛情、不器用すぎて伝わらなかった気持ち、もう会えない人のことを思い出す瞬間。父、母、子供、祖父母——家族にまつわる感動する話をお届けします。

砂時計の三分間

教壇を下りて独りになった七十代の元教師の私に、孫の太一がくれた小さな砂時計の三分。音読が苦手で心臓の弱いあの子と、平成初期の縁側で一冊の本を読みあった日々。別れ…

機織りの伯母がくれた杼

昭和の織物の町で、無口な機織りの伯母に育てられた私。家業を継ぐのを拒み、ひどい言葉を投げつけた後、伯母は病に倒れた。和解できぬまま迎えた別れの間際、震える手で渡…

母がボタンを付ける理由

母が倒れて、私は商店街の小さなクリーニング店に立った。カウンターの隅の青い缶には、色も形もばらばらのボタンが何百個。常連客の一言で、私はその缶の正体を知る。見送…

椿油のひと匙

祖母の椿油のにおいに、私は三十年逃げ続けていた。髪結いだった祖母が毎朝梳いてくれた髪を、私は年ごろに嫌い、短く切ってしまった。取り壊される家の鏡台で見つけた小瓶…

父が隠した首輪

犬との別れを、私は父のせいだと三十年恨み続けた。だが父を見送ったのち、引き出しから現れた白い犬の赤い首輪と古いバスの半券が、語られなかった真実を静かに告げる。毎…

豆の数だけ

戦時中、町役場に勤める祖父は毎晩ひと粒の大豆を空の袋へ移していた。これは祖父の思い出をたどる泣ける短編小説です。孫と過ごした一日を宝として数え続けた祖父が、ある…

父の独楽

父の独楽を、私は四十年ものあいだ箱の奥に仕舞っていた。戦時中、時計の修理に追われ、幼い息子と遊んでやれなかった父。手すきになったらいっしょに回そう、という約束は…

父の色褪せた半纏

色褪せて擦り切れた父の半纏が、子供の頃の私には恥ずかしくてたまらなかった。昭和の下町、寡黙な提灯職人だった父と息子の物語。その裏地に隠されていた、先立った母の縫…

母の代筆 二十九通

介護福祉士の主任として、よその家のお母ちゃんばかり何百人と看取ってきた私が、亡き母の鏡台で見つけた桐の文箱と二十九通の便箋。それはすべて、面会に来られない娘を庇…

ばあちゃんの真空管

認知症で僕の名前を忘れた祖母。それでも深夜のAMラジオから僕の声が流れた瞬間、彼女は『ホタくん、また喋ってる』と呟いた──真空管ラジオが繋いだ最後の言葉を綴る、…