カテゴリー: ちょっと切ない話

胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。

連絡帳の約束

泣ける話。ほとんど学校に来られない少女に毎日連絡帳を届ける係になった俺は、帳面の隅で交わした小さな文通と、指切りの約束を知ります。渡せなかった一枚の絵、果たせな…

父の名字

血のつながらない父を、私はずっと父だと思えませんでした。無口で不器用なその人が、菓子の缶にひそかに隠していたもの。遺された手帳のたった一行が、すれ違い続けた親子…

母が遺したフィルム

母が中古のフィルムカメラで撮り続けていたのは、なんでもない私の毎日でした。つまらないと突き放した息子が、遺されたフィルムを現像して初めて知る、本当の宝物。港町で…

天国のママへ

妻を病で亡くし、四歳の息子と二人になった父。ある日、息子が急に「ひらがなを教えて」と言い出します。その理由を保育園の先生から電話で聞かされたとき、父は台所の床に…

彼女の面影

古いピアノの調律をきっかけに結ばれた二人。けれど彼女は、若くして記憶を失っていきます。渡せなかったアクアマリンの指輪を手に、彼は遠い海辺の町へ彼女を訪ねました。…

猫が選んだ場所

古書店の帳場で十六年を共にした老猫の看取りの物語です。最期の居場所を探して姿を消した灯が、泥まみれになって帰ってきて、最後に選んだのは、わたしの腕の中でした。深…

母を守りたい

父の暴力から母と二人で逃げてきた痩せた少年が、自分の足で剣道道場を訪ねてきました。お母さんを守れるくらい強くなりたい。その一途な願いを胸にひたむきに打ち込む姿は…

母の肉じゃが

右手が不自由な母の弁当を、幼い僕は不格好だと恥じて拒んでしまいました。やがて見違える弁当を作り始めた母は、わずか三ヶ月後に逝ってしまいます。母が陰で通っていた喫…