猫が選んだ場所

公開日: ちょっと切ない話 | ペット |

猫の寝顔(フリー写真)

物心ついた時からずっと一緒だった猫が病気になった。

いつものように私が名前を呼んでも、腕の中に飛び込んで来る元気も無くなり、お医者さんにも

「もう長くはない」

と告げられた。

『今は悲しむよりも、最期までこの子の傍に居よう』

私がそう決心して間も無く、猫は家から消えた。家中捜しても見当たらない。

父が、

「猫は死ぬ間際、自分の死に場所を探しに旅に出ると言うからね。

きっとあの子も死期を悟って、自分に合った場所を探しに出掛けたんだよ」

と慰めるように言ったが、当然私は受け入れられず、あの子の名前を呼びながら町中を捜し回った。

途中で頭を過るあの子との思い出に涙が溢れても、転んで足を擦り剥いても、ひたすら名前を呼びながら捜し回った。

やがて日も暮れ、母に

「一度家に戻ろう」

と言われ家に戻ると、庭の向こうから私以上にボロボロになり、泥だらけになったあの子がこちらに近付いて来た。

涙で霞む目を何度も擦って確認したが、間違い無くうちの猫だった。

枯れた声で名前を呼ぶと、ふらつきながらも精一杯の力で、私の腕の中に飛び込んで来てくれた。

どれくらい経っただろう。

やがてあの子は、私の腕の中で眠るように息を引き取った。

「この子は我が家で暮らして来て幸せだったのかもしれないな」

と父が言った時、悲しさが少しだけ嬉しさに変わった。

私もそう思えた。

この子は最期も私の腕の中を選んでくれたのだから。

野球(フリー写真)

甲子園の約束

十年前、彼女が死んだ。 当時、俺達は高校3年生。同じ高校に通い、同じ部活だった。 野球部だった。 俺と彼女は近所に住む幼馴染で、俺は小さな頃から、野球が好きな両親に野…

ハンバーグ(フリー写真)

お母さんの弁当

俺の母さんは、生まれつき両腕が不自由だった。 なので料理は基本的に父が作っていた。 でも遠足などで弁当が必要な時は、母さんが頑張って作ってくれていた。 ※ 小学六年生の…

夏休みの情景(フリー写真)

バス停の女の子

俺が小学3年生の夏休みの話。 今の今までマジで忘れていた。 小学校の夏休みとか、遊びまくった覚えしかない。 俺は近所の男子と夏休み中、開放されていた学校の校庭で、午後…

母の絵(フリー写真)

欲しかったファミコン

俺の家は母子家庭で貧乏だったから、ファミコンが買えなかった。 ファミコンを持っている同級生が凄く羨ましかったのを憶えている。 小学校でクラスの給食費が無くなった時など、 …

犬(フリー写真)

犬からの10のお願い

1. 私の一生は、10~15年程しかありません。 ほんの僅かな時間でも、貴方と離れていることは辛いのです。 私を家族に迎える前に、どうかそのことを考えてください。 …

ディズニーランド(フリー写真)

ディズニーランドの星

ある日、ディズニーランドのインフォメーションに、一人の男性が暗い顔でやって来ました。 「あの…落とし物をしてしまって」 「どういったものでしょうか?」 「サイン帳です…

夏の部屋(フリー写真)

残された兄妹

3年前、金融屋をやっていたんだけど、その年の夏の話。 いつものように追い込みを掛けに行ったら、親はとっくに消えていたんだけど、子供が二人置いて行かれていた。 5歳と3歳。上…

犬(フリー写真)

良い犬の話

良い人じゃなくて、良い犬の話。 知り合いのお爺さんが愛犬と山道を散歩していて、途中のベンチで座って一休みしていたら…。 蛇(名前は忘れたが毒を持っている)がお爺さんに齧り付…

スケッチブック(フリー写真)

手作りのアルバム

うちは貧乏な母子家庭で、俺が生まれた時はカメラなんて無かった。 だから写真の代わりに、母さんが色鉛筆で俺の絵を描いてアルバムにしていた。 絵は決して上手ではない。 た…

ワイン(フリー写真)

ワイン好きの父

いまいち仲が良くなかった父が、入院する前夜にワインを取り出し、 「まあいつまで入院するか分からないけど、一応、別れの杯だ」 なんて冗談めかして言ったんだ。 こんなのは…