タグ: 親子

第二日曜に母は出かける

母の鞄には、よく晴れた日にも折りたたみ傘が入っていた。第二日曜だけは用事があると言って、私の誘いはいつも断られた。母が入院した週、財布に残っていた交通系ICカー…

父が捨てなかった種袋

父の種袋には、売れ残りの古い種が入っているのだと思っていました。無口な父を見送り、二十四で小さな種苗店を継いだ春、私は触るなと言われた一番上の棚に手を伸ばします…

転校生の父が歌い出した日

北関東の工業団地の町に転校してきた、日本語のたどたどしい同級生。わたしは一度だけ、彼を見捨てた。合唱コンクールの日、耳の聞こえないはずの彼の父が客席で立ち上がり…

風鈴職人と小さなお客さん

昭和の港町を舞台にした泣ける話。風鈴職人の私のもとへ、海から戻らぬ父のために、泣いてばかりの母を笑わせたいという男の子が訪れた。豆粒ほどの小さな風鈴に託した祈り…

父の独楽

父の独楽を、私は四十年ものあいだ箱の奥に仕舞っていた。戦時中、時計の修理に追われ、幼い息子と遊んでやれなかった父。手すきになったらいっしょに回そう、という約束は…

父の色褪せた半纏

色褪せて擦り切れた父の半纏が、子供の頃の私には恥ずかしくてたまらなかった。昭和の下町、寡黙な提灯職人だった父と息子の物語。その裏地に隠されていた、先立った母の縫…

父が頭を下げた人

父が急逝し、小豆島の小さな醤油蔵を継いだ俺の前に、四十年勤めた女性が辞表を出した。父と彼女が交わした四十年前の約束を辿った時、机の底から出てきた一冊のノートが胸…

父が三十年彫り続けたもの

単身赴任の父が三十年かけて作った帆船模型。沖縄の離島で父と再会した息子が、船底に刻まれた二十数年分の「ただいま」を発見する泣ける話。不器用な父の愛が、静かに胸に…

妻の名が彫られた鑿

船大工の俺は、亡き父の道具箱から「とみ」と妻の名が彫られた古い鑿を見つけた。三十五年連れ添った妻と、亡き父が静かに残した感謝の物語。号泣必至の感動短編。…

片道三時間の嘘

三年間帰らなかった実家。電話口の「大丈夫」を信じたふりをしていた俺と、膝の痛みを隠していた母。軒先の干し花が教えてくれた、不器用な親子の本当の距離の話。…

割烹着に残る花の匂い

港町の惣菜屋で働く母の割烹着が恥ずかしかった。東京で花屋を開いた息子が十年ぶりに帰郷して見つけたのは、母が裏庭でひっそり育てていた息子と同じ花だった——心が震え…

母が誰かに預けていた一杯

墨田の路地を配達して七年、実家のある二丁目だけを避けて走ってきました。三丁目の田中さんが毎回出してくれる縁の欠けた薄緑の湯呑みと、押し入れの奥から出てきた一枚の…