タグ: 長編

親方の革砥を継いだ夏

昭和の終わり、北関東の城下町で三代続いた床屋を継いだ続かない俺。大叔父である先代から受け継いだ親方の革砥と、三十年分の常連カルテだけを頼りに刃を握る。嵐の朝、シ…

削りかけの木

母を亡くした後、無口な林業家の父と疎遠になった陶芸家の息子。父の入院をきっかけに実家を訪れた彼が、作業小屋で見つけた28体の木彫りの人形に刻まれていた、誰にも語…

母が誰かに預けていた一杯

墨田の路地を配達して七年、実家のある二丁目だけを避けて走ってきました。三丁目の田中さんが毎回出してくれる縁の欠けた薄緑の湯呑みと、押し入れの奥から出てきた一枚の…

妻がずっと書いていた返事

大分・長湯温泉の朝、四十年前の琺瑯の弁当箱を開けると、底に色褪せた付箋が一枚だけ残っていました。包みの結び目がいつも左に寄っていた理由、妻が四十年切らさなかった…