タグ: 実話

路地に立てかけられた板

和歌山・湯浅の醤油蔵が並ぶ細い路地で、置き忘れたスケッチブックが白い袋と一枚の板に守られていました。軒下に立てかけられた板が四十年前から誰のために置かれていたの…

ガイドブックの赤鉛筆の線

東京に来ないかと誘うたび、母は人ごみが苦手やからと断った。その母の鏡台の引き出しから出てきた十二年前のガイドブックには、浅草にも焼肉屋にも赤鉛筆の線が引いてあり…

島田先生の髪が短くなった日

祖母の鏡台には、三センチまで削って止まった鉛筆が一本あります。戦後まもない教室で、島田先生の髪が腰まであった理由と、それが一晩で短くなった朝のこと。教壇に置かれ…

二十六年聴かなかったCD

中学一年で図書委員だった彼が、転校の前日に真っ白なCDを黙って渡してきました。怖くて二十六年しまい込んだその一枚を再生した日、図書館の貸出カードの一つ上の欄が意…

小銭を二度に分けて入れる子

山口・下関の路線バスを二十六年運転した男性の話です。毎朝同じ便に乗る女子高生が、料金箱の前で必ず小銭を二度に分けて入れていました。その三秒が誰のために使われてい…