救助活動
東日本大震災。
辺りは酷い有り様だった。
鳥居の様に積み重なった車、田んぼに浮く漁船。
一階部分は瓦礫で隙間無く埋め尽くされ、道路さえまともに走れない。
明るくなると周りは更に悲惨な状態だった。
少し現実離れした光景に、
『夢の中に迷い込んだのか?』
と思われる程だった。
夜に現地入りしたが、そのまま寝ずに準備に明け暮れた。
人影は無く、電線は切れてバチバチ火花を出し、プロパンガスも開栓されたまま転がっている。
余震や津波の二次災害に内心恐怖を感じたのを覚えている。
生存者救助は、絶望的だと思われた。
※
数日が経ち、それでも僅かな望みを願いながら腰まで水に浸かり、泥の中を探っていた。
そこに一人の女性が現れ、
「すみません、息子があちらに居るんです!助けてもらえませんか?」
と声を掛けてきた。
流され必死で金網にしがみついたが力尽き、息子の手を離してしまったと泣きながら頼んできた。
総勢20名程で重なる瓦礫をよけ、泥を掘り返し休まず探すと、泥にまみれた衣服の端が見えた。
急ぎ掘り返すと小学校低学年くらいの子が見つかった。
母親は静かに傍らにしゃがみ、息子に声を掛けた。
「良かったね、自衛隊のお兄ちゃんたちが見つけてくれたよ、良かったね…。
本当に有り難うございます」
何度も頭を下げられたが…。
水で綺麗にしてあげて、布で包み、仮設安置所行きの車に乗り込む。
皆手を合わせ泣いていた。
多くの人々のご冥福を心より念願し、少しでも早く復興しますことを御祈りしております。