愛猫と過ごした日々

公開日: ペット | 悲しい話 |

眠る猫(フリー写真)

俺は18歳なのだけど、今年で18年目になる飼い猫が居る。つまり俺と同い年だ。

どんなに記憶を遡ってもそいつが居る。

本当に兄弟のように一緒に育った。

布団の中に入って来るし、寝る時に部屋に連れて行かないと、廊下で部屋に入れろと鳴く。

餌は好き嫌いが多いし、甘えて来ても腹が一杯になれば呼んでも五月蝿そうに振り向くだけ。

そんなところも妙に可愛い。

でも、そいつもこの数ヶ月で急に衰え始めた。

餌が食えない。階段が昇れない。一度横になるとなかなか立ち上がれない。

病院に連れて行ったら老衰だった。

覚悟をしていて下さいと言われた。

胸が苦しい。言葉が出ない。

半年前なら、外に連れ出せばすぐに走ってどこかに行こうとしたのに、今は腕の中で丸くなっているだけ。

こんなに軽かったっけ? こんなに細かったっけ?

事故で死んだりするのとは違い、ゆっくりと確実に終わりに近付いて行く。

こんなに悲しいなら飼わなければ良かった。

だけどこいつが居なきゃ嫌だ。

死んで欲しくない。

あと20年ぐらい生きて欲しい。

神様、お願いだよ。

家族を連れて行かないで…。

関連記事

ウェットフードを食べる猫(フリー写真)

猫エサ缶とコーヒー

俺はコンビニで一人夜勤をしている。 いつも夜中の3時くらいに、猫エサ缶とコーヒーを買って行くおっちゃんがいる。 おっちゃんが、 「うちの猫はこれしか食べないんだよ」 …

子猫(フリー写真)

こはくちゃん

彼女を拾ったのは、雪がちらほらと舞う寒い2月の夜。 友人数人と飲みに行った居酒屋でトイレに行った帰り、厨房が騒がしかったので『何だ?』と思ったら、小さな子猫を掴んだバイトが出て来…

カップルの後ろ姿

届かぬ想い

関係を迫ると、「あなたは紳士じゃない」と言われた。 けれど、関係を迫らなければ、「あなたは男じゃない」と責められた。 何度も君の部屋を訪ねると、「もっと一人の時間が欲しい…

可愛い犬(フリー写真)

ボロという犬の話

小学3年生の時、親父が仕事帰りに雑種の小犬を拾って来た。 黒くて目がまん丸で、コロコロとした可愛い奴。 でも野良なので、小汚くて毛がボロボロに抜けていた。 そんな風貌…

ベランダの洗濯バサミ

君たちがいた家

嫁と娘が、ひと月前に亡くなった。 交通事故だった。車は大破。単独事故だったらしい。 その知らせを受けたのは、出張先の根室にいたときだった。 何とかして帰ろうとしたが…

学校(フリー背景素材)

たくちゃん

その人は一個上の先輩で、同級生や後輩からも『たくちゃん』と呼ばれていた。 初めて話したのは小学校の運動会の時。 俺の小学校は、全学年ごちゃ混ぜで行われる。俺は青組みだった。…

夜の車道

届かなかったごめん

あの日、俺は彼女と、ほんの些細なことでケンカをしていた。 原因は覚えていないほどの小さなことだったけれど、お互いに意地を張り、言葉が冷たくなっていった。 険悪な空気のまま…

親子

失ってもなお、愛している

家内を亡くしました。 お腹には、二人目の子どもがいました。 その日、彼女は病院へ向かうため、タクシーに乗っていました。けれど途中で、居眠り運転のトラックと正面衝突。あまり…

夫婦の後ろ姿

娘になった君へ

俺が結婚したのは、20歳のときだった。 相手は1歳年上の妻。学生結婚だった。 二人とも貧乏で、先の見えない毎日だったけれど、それでも毎日が幸せだった。 ※ 結…

手紙(フリー写真)

生きて欲しかった

私は高校2年生です。 去年、3つ下の妹が自殺しました。 妹はいつも笑顔で『悩みなんてない!』みたいな子でした。 妹は成績は散々だったけど、コミュニケーションが苦手な…