鳴かない猫

公開日: ちょっと切ない話 | ペット |

猫(フリー写真)

昔話だけど。

実家の猫は赤ちゃんの時、空き地で目も潰れて放置され、泣き喚いていたところを保護したんだ。

正直、化け猫のようで触るのも躊躇するほどの悲惨さだった。

目は病院で治療してもらって開いたけど、命の保証は出来ませんと言われた。

だけどちゃんと育ってくれてね。

本当に毛並みも美しく、ビックリするほどの美猫になったんよ。

ただ、あの空き地で声の限り鳴き続けたせいか声帯が潰れ、鳴かない猫だった。

で、時は流れてさ。

俺が人に裏切られたり、人生の辛苦を舐めた時期があってね。

ある日、もうどうしようもない、死のう、と天井から紐をぶら下げたのさ。

正に紐に首を通した時だったよ。

猫が窓から部屋に入って来て、俺の足元にまとわりついて、

「ニャーニャー」

と鳴き声を上げたんだ。

ビックリしてね。こいつの鳴き声なんて、掠れた小さな声しか聞いたことがなかったから。

うちの猫は、俺の命の恩人だ。

今でも18年以上、長生きしてくれている最高の猫だ。

関連記事

手紙を書く手(フリー写真)

寂しい音

ある書道の時間のことです。 教壇から見ていると、筆の持ち方がおかしい女子生徒が居ました。 傍に寄って「その持ち方は違うよ」と言おうとした私は、咄嗟にその言葉を呑み込みまし…

手を繋ぐ夫婦(フリー写真)

最高の両親

ある女性が学生の頃に暴行されました。 男性不信になった彼女はずっと男性を避けていましたが、会社勤めをしているうちに、そんな彼女に熱烈にアタックしてくる人がいました。 その…

ファミコン(フリー写真)

消えた冒険の書

私には、兄が居ました。 三つ年上の兄は、妹思いの優しい兄でした。 子供の頃はよくドラクエ3を兄と一緒にやっていました(私は見ているだけでした)。 勇者が兄で、僧侶が私…

高校生(フリー写真)

ほら、笑いなよ!

高校2年生の夏、僕は恋をした。 好きで好きで堪らなかった。 その相手を好きになった切っ掛けは、僕がクラスで虐めに遭い落ち込んでいた頃、生きる意味すら分からなくなり教室で一人…

手を握る夫婦(フリー写真)

パパしっかり

妻へ まだ高校生だけどしっかり者の一人娘を遺してくれて有難う。 昨日の貴女のお通夜は寂しくないように沢山の友達連れて来てくれて有難う。 でもやっぱり寂しくて、娘と声…

女の子の後ろ姿(フリー写真)

温かい家庭

兄家族が俺達の家にやって来て、長女を押し付け引っ越して行った。 兄も兄嫁も甥っ子だけが生き甲斐みたいなところがあったんだよね。 甥っ子は本当に頭が良かったんだ。 勉強…

ゲーミング(フリー写真)

母の愛、信じる笑顔

幼い頃、父が交通事故で亡くなり、母一人で私を育ててくれた。 我が家は裕福ではなく、私は県立高校を落ちてしまった。 私立には通うことができず、定時制高校に進学した。 …

手を繋ぐ夫婦(フリー写真)

最愛の妻が遺したもの

先日、小学5年生の娘が何か書いているのを見つけた。 それは妻への手紙だったよ。 「ちょっと貸して」 と言って内容を見た。 まだまだ汚い字だったけど、妻への想いが…

兄弟(フリー写真)

最強最高の兄ちゃん

両親は俺が中学2年生の時、交通事故で死んだ。 俺には4つ上の兄と、5つ下の妹が居る。 両親の死後、俺は母方の親戚に、妹は父方に引き取られて、兄は母方の祖父母と住んでいた。 …

花と手紙(フリー写真)

彼女が遺した手紙

私(晃彦)には幼稚園から連れ添ってきた恋人(美咲)がいる。 私が高校を卒業し、就職してからも同居し、貧乏ながらも支えてくれた掛け替えのない存在。 プロポーズの決心をしてから…