渡せなかった婚約指輪
彼女と死別した。
気付いたらもう3年も前の話だ。
彼女の誕生日の前日、プロポーズした。
「誕生日のプレゼントと婚約指輪、一緒にしちゃっていい?」
と笑って話していたのに。
その日の夕方、俺の家に一緒に帰る途中だった。
後ろから凄い音がして、同時に右側にいた彼女がいなくなった。
脇見運転の車に撥ねられ、彼女だけが飛ばされた。
腕を組んで歩いていたのに、彼女だけが撥ねられた。
抱きかかえたら、
「ごめんね」
だって。
意識もあるかないかという状態なのに、必死で首にしがみついてくるんだよ。
息があるうちに最後にキスしてあげられたのが、せめてもの救いだった。
立ち直れる人は凄いと思う。
俺はだめだ。
この先も一生、彼女の思い出と生きて行く。
今でも渡せなかった婚約指輪を見る度に涙が出るよ。