憶えていてくれるかなあ

公開日: 恋愛

ノートパソコン(フリー写真)

君が死んでから、もう一年が経つ。

君は今も僕を、見守ってくれているのかな?

君は僕にとって、生まれて初めて出来た彼女だった。

凄く嬉しくて、幸せだったなあ。

突然、白血病であると医者に宣告されてから、君は病室で日に日に弱って行った。

「病院って暇ねえ」

と笑う君を見て、僕はいつも泣いていたんだ。

君のために僕の小汚いノートパソコンをあげたら、君は凄く喜んでくれたよね。

ネットをするようになった君がいつも見ていたサイト。

それが『2ちゃんねる』だった。

ある日、君はいつものように、笑いながら言った。

「ほら、見て。今日も2ゲット出来たよ」

「あまりパソコンばかり弄ってると身体に障るよ」

なんて僕が注意すると、

「ごめんねえ。でもね、これ見てよ。

ほら、この3の人。『2げっとぉ!』なんて言っちゃってさぁ、フフ♪」

僕は黙っていた。君が凄く楽しそうで、僕には何も言えなかった。

「ほら見て、この3の人。変な絵文字使って『くやしぃ~!』だって。かわいいねえ。フフ♪」

僕はまだ黙っていた。笑う君を見て、どうしようもなく悲しくなった。

「憶えていてくれるかなあ」

君がふと言った。

「この3の人、私が居なくなっても、

『あの時、変な奴に2を取られたんだよなー』

なんて、憶えていてくれないかなあ……。

無理かな……。

憶えていて、ほしいなぁ……」

それから数ヶ月後、君は家族と僕に見守れながら息を引き取った。

君はもうこの世に居ない。

なのに僕は今、F5キーを連続で叩いている。

君の事を、3の人が忘れないように。いつまでも、いつまでも忘れないように。

僕が2ゲットを取って、忘れられないように。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

泣ける話・感動の実話まとめ - ラクリマ | note

最新情報は ラクリマ公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

駅のホームに座る女性(フリー写真)

貴女には明日があるのよ

彼女には親が居なかった。 物心ついた時には施設に居た。 親が生きているのか死んでいるのかも分からない。 グレたりもせず、普通に育って普通に生きていた。 彼女には…

暗い道

最後の夜に残された想い

一年間、同棲していた彼が、突然この世を去った。 理由は交通事故だった。 それも、私たちが大喧嘩をした、その日の夜のことだった。 本当に、あまりにも突然すぎて、現実と…

朝焼け

彼女の愛と意志

親父がサラ金で作った借金を抱えて逃げてしまった。 その結果、長い間別居していた母と再び一緒に住むことになった。表面上は友達や母に明るく振る舞っていたが、内心はかなり参っていた。…

手をつなぐカップル(フリー写真)

未来への遺言

私の初恋の人、かつての彼氏がこの世を去りました。 若さゆえに我儘を尽くし、悔いが残る行為ばかりでした。 ある日、突如として「別れて欲しい」と告げられ、私は意地を張って「い…

カップル(フリー写真)

僕はずっと傍に居るよ

私は昔から、何事にも無関心で無愛想でした。 友達は片手で数えるほどしか居らず、恋愛なんて生まれてこの方、二回しか経験がありません。 しかし無愛想・無関心ではやって行けないご…

カップルの影

残された日記

二年間付き合っていた彼に、突然別れを告げられました。 それは、彼の口から出たとは思えないほど酷い言葉で、心が引き裂かれるような別れでした。 どれだけ「まだ好きだ」と伝えて…

桜(フリー写真)

桜と最後の嘘

僕は良いところなど一つも無いと言って良い程、嫌な人間だった。 ルックスに自信は無く、頭も良くはない。そして、人に平気で嘘を吐く卑怯者。 僕に構う人など誰も居なかった。もちろ…

机

文化祭の日には

ある日、教室へ行くと座席表が更新されていました。私の席は廊下側の前から二番目、彼は窓側の一番後ろの席。離れてしまいましたが、同じクラスになれて本当に良かったと思いました。 クラ…

キャンドル(フリー写真)

キャンドルに懸けた想い

僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重ねて怖くなったこと…

手繋ぎ

重なる運命のメッセージ

彼と彼女は、いつものツタヤの駐車場で待ち合わせをしました。お互いに重要な話があり、緊張しながら集まった二人は、メールで心の内を伝え合うことにしました。 彼は重い告白をしました。…