ずっと並んで歩こうよ

公開日: 心温まる話 | 恋愛

手を繋いで夕日を眺めるカップル(フリー写真)

交通事故に遭ってから左半身に少し麻痺が残り、日常生活に困るほどではないけれど、歩くとおかしいのがばれる。

付き合い始めの頃、それを気にして一歩下がるように歩いていた私に気付き、手を繋いで一緒に並んで歩いてくれた。

家に帰ってから訳を聞かれたので、

「○○君に恥ずかしい思いをさせたくなかったから」

と言った。そしたら、

「どうしてそんな考え方をするんだ」

と怒られたので、

「大好きだった○○君と付き合えてるだけで幸せだから。私と付き合うことで、○○君に少しでも嫌な思いをさせたくないから」

と言った。

すると泣きながら私の両手を持って、目の中を覗き込むようにして諭してくれた。

「俺はお前と付き合ってあげてる訳じゃない。俺がお前を好きで一緒に居たい、付き合いたいと思ったから付き合ってるんだ。

お前の体のことなんか、ずっと前から知ってたけど、一緒に歩いて恥ずかしいなんて一回だって思ったことはないよ。お前がそんな風に考えてるのが俺は悲しい。

俺に気を遣わないで。自分のことを恥じないで。もっと自信を持って胸を張って欲しい。

ずっと並んで歩こうよ。お前は俺の自慢の彼女なんだから」

私のことをここまで思ってくれる人には、絶対会えないと思う。

凄く嬉しくて、涙が止まらなかった。

今はどこに行く時も、並んで歩いています。

関連記事

浜辺

指輪の記憶

彼女が認知症を患った。 以前から物忘れがひどくなっていたが、ある日の夜中、突然「昼ご飯の準備をする」と言い出し、台所に立ち始めた。 そのうえ、「私はあなたの妹なの」と口に…

ベゴニア(フリー写真)

初めて好きになった人

俺が小学6年生の頃の話。 俺は当時、親の転勤で都会から田舎へと引っ越しをした。時期はちょうど夏休み。全く知らない土地で暮らすのはこれで五回目だった。 引っ越しが終わり、夏休…

ハート(フリー素材)

残りの一年

彼女に大事な話があるからと呼び出した。 彼女も俺に大事な話があると言われて待ち合わせ。 てっきり別れると言われるのかと思ってビビりながら、いつものツタヤの駐車場に集合。 …

数式(フリー素材)

天才数学者の意志

人は彼のことを「神童」とも「天才」とも「未来を嘱望された若手数学者」とも形容する。 ただ一貫しているのは、彼の頭脳力と、それに劣らない人格に対する尊敬と敬愛だろう。 20…

赤ちゃんの足を持つ手(フリー写真)

ママの最後の魔法

サキちゃんのママは重い病気と闘っていたが、死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。 その時、サキちゃんはまだ2歳だった。 「あなた、サキのためにビデオを3本残します。 このビ…

海

最後の敬礼 – 沖縄壕の絆

沖縄、戦時の地に息をひそめる少年がいました。 12歳の叔父さんは、自然の力を借りた壕で日々を過ごしていたのです。 住民たちや、運命に翻弄された負傷兵たちと共に。 し…

色鉛筆で描かれた線(フリー写真)

弟の物語

私の家族は、父、母、私、弟の四人家族。 弟がまだ六歳の時の話。 弟と私は十二才も歳が離れている。凄く可愛い弟。 だけど私は遊び盛りだったし、家に居れば父と母の取っ組み…

バイオリン(フリー写真)

世界一の良い娘

昨夜、嫁とケンカした。 切っ掛けは些細なことで、小学2年生の娘がバイオリンを習いたいと言い出したことだ。 嫁「本人がやりたいなんて言い出すのは珍しいから、習わせてあげたい」…

散歩する親子(フリー写真)

家族三人で過ごした思い出

私の母親は、私が12歳の時に亡くなりました。 ただの風邪だったのに、入院してから1週間後にはもういなくなってしまったのです。 そして、父親も私が20歳の誕生日の1ヶ月後に…

花嫁(フリー写真)

兄として、父として

最近、私は友人の娘の結婚式に参加しました。 その友人とは高校時代からの長い付き合いで、その娘のこともよく知っています。 彼女の結婚式の案内を受けて、私は喜んで出席すること…