彼女の嘘

公開日: ちょっと切ない話 | 恋愛

花を持つ女性(フリー写真)

あなたは本当に俺を困らせてくれたよね。

あなたと付き合った日。

朝のバスでいきなり大声で、

「付き合ってください!」

そんな大声で言われても困るし。

と言うか場所考えてよ。

初めてのデートの日。

寝坊で3時間も遅れて来た。

あれには正直びびったよ。

ペアマグを一緒に買った日。

あなたは早速帰りに落として壊したよね。

あの後、もう一度買いに行くの面倒だった。

一緒に海遊館へ行った日。

イルカを見ていたら、はぐれちゃったよね。

だってあなたはイルカを見た瞬間、人混みに飛び込んで行ったんだもん。

探すのが大変だった。

それからどこへ行くにも手を繋いでいたね。

俺が修学旅行のお土産のぬいぐるみを渡した時。

あなたは嬉し過ぎてか、大泣きしていたね。

周りの人に泣かせたと思われたらしくて、周りの視線が痛かった。

あなたと一緒に誕生日を祝った日。

帰り際になかなか離してくれなくて、大変だった。

お陰で夜遅く帰って、親に物凄く怒られた。

あなたが、病気の事を打ち明けてくれた時。

何で今まで黙っていたんだよとか、言いたい事が沢山あった。

あなたと一緒に泊まった日。

あなたはテンションが上がり過ぎて、俺の友達に電話やメールをしまくっていたよね。

あの後、学校で皆からの質問攻めが大変だったんだよ?

あなたから、病気は治ったと聞いた時。

自分の事みたいに嬉しかった。

でもそれを言うのが別れる前日って(笑)。

あなたに東京へ行くからと、別れを言われた時。

めちゃくちゃ辛かった。

心が張り裂けそうだった。

あなたと別れて、それでも連絡が毎日のように来ていた時。

別れた意味ないじゃんって、内心思ってた。

とても嬉しかったけど。

あなたからの連絡が途絶えた時。

ああ、忘れられたんだと、とても凹んだ。

高校に入って、あなたから手紙が届いた。

とっても嬉しかった。

でも、そこに入っていた手紙は、あなたからの手紙と、あなたのお母さんからの手紙。

あなたからの手紙には、今までの思い出などが、沢山書いてあった。

それを読んでいる時、今すぐにでも会いたいと、心の中で叫んでいた。

けど、あなたのお母さんからの手紙で、その叫びは打ち消された。

ねえ、何であなたは、病気が治ったなんて嘘を吐いたの?

東京に行く理由も治療のためだって、何で正直に話してくれなかったの?

俺が悲しまないようにって、嘘吐かれた方が悲しいんだよ?

俺はあなたの彼氏です。彼氏なんだから、最後くらい、一緒に居たかったよ。

あなたからの手紙の最後の言葉。

『あなたを愛しています』

その言葉は、あなたの口から、聞きたかったよ。

沢山愚痴を書いたけどね、一つ確かな事がある。

それは、あなたと一緒に居れば、笑顔が絶えなかった事。

あなたと一緒に居るのが、本当に楽しかった。

本当に、ありがとうね。

あれ以来、本気で恋をするのが恐かった。

また、嘘を吐かれるんじゃないかって。

臆病になっていたんだ。

でも、この間、またあなたから小包が届いた。

そこに入っていたのは、あなたが付けていた闘病日記の一ページと、あなたのお気に入りのピアス。

あなたは死んでも、僕を困らせてくれるんだね。

『私の最後のお願い。

私以上に、誰かを愛して下さい』

あなたのピアスは今、僕の首にネックレスとなって掛かっています。

あなたの最後のお願いを叶えるために、新しい恋を、今日から始めるよ。

ありがとう。

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