先生の目に浮かぶ涙

教室

私がその先生に出会ったのは、中学一年生の時。

明るくて元気いっぱいの先生だったけれど、怒るときはすごい勢いで怒る。

そんなパワフルな先生が、私はとても好きだった。

「この先生が担任で本当に良かった」と心から思っていました。

一年生の後半、私はいじめを受けた。

どんないじめだったかは言わないけれど、辛かった。

以前、いじめを解決するのが面倒だと感じていた経験から、誰にも言えずに我慢していました。

ある日、先生に呼び出されました。

いじめがばれていたんです。

私は仕方なく全てを話しました。

先生は私の話を真剣に聞き、険しい顔で言いました。

「彼らにはしっかり言っておくよ」

話し合いはないようでした。

私はほっとしました。

しかし、先生は「何で黙っていたの?」と聞きました。

私は上手く答えられずにいました。

そのとき、先生はしんみりと「気付いてあげられなくて、ごめんな…」と言いました。

涙を浮かべた先生の姿に、私は申し訳なくて胸が張り裂けそうになりました。

いじめの問題は見事に解決しました。

いじめっ子たちはがっつり叱られ、以後は大人しくしていました。

先生は私の気持ちを尊重し、親には言わなかったのです。

二年生に進級してからは、その先生と関わることはなくなりました。

でも、廊下で先生とすれ違うたびに胸が痛んだんです。

先生の涙は今も忘れられず、これからもずっと心に残るでしょう。

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