恩師の愛情

公開日: 仕事 | 心温まる話

放課後の教室

私は高校2年生の時にうつ病になった。

切っ掛けは、2年半付き合った彼氏に振られたことと、友達から仲間はずれにされるようになったことだと思う。

毎日、泣いていた。

プライドが許さず、先生にも両親にも泣いている理由を話せなかった。

そんな私に母親は「先生にも友達にも恵まれてるのに、何でそんな泣くのよ」と言った。

また涙が出た。

その友達がいないんだよと。

だんだん学校へ行くのが辛くなって、行きの電車、帰りの電車は毎日泣いていた。

電車で一緒だった人は『何だこいつ』と思っていただろうな(笑)。

毎日、目を腫らして学校へ行くものだから、ある先生が心配してくれた。

でも、言えなかった。

もともと自分の話をするのは得意じゃなかったし、人を信用することもできなかった。

でも先生は諦めずに私に寄り添ってくれたんだ。

ある日の放課後、教室で二人で話をした。

と言っても、先生が一方的に話しているだけだったけど。

ゆったりとした空間で、私はまた泣いた。

話を聞いたからでもなく、何の理由もなく泣いた。

先生は落ち着いた様子で「どうした?」と言った。

知っている癖になあ、なんて思ったりもした。

やっと話そうと決意した時でも、私はまだ話せなかった。

言葉が胸につかえて出て来なかった。

その状態が続いて5分くらいかな。

時間をかけてやっと話した言葉は「もう息をするのが辛い」だった。

先生は責める様子もなく、静かに泣き始めた。

ぽろぽろと。

そして、

「ごめんね、なにか言葉をかけるべきだよね。

でも、こんなに涙が出て来るのは、私にとってあなたが大切な存在だからなんだね」

と言ってくれた。

先生にとっては数多くいる生徒の一人だし、ましてや赤の他人だし。

でも、その涙が私よりも私を大切にしてくれている証のようで、今度は嬉し泣きをした。

最終的には二人で涙と鼻水でぐちゃぐちゃになって泣き腫らした。

それから心のつかえが凄く取れて、心が楽になった。

泣くことも眠れないことも少なくなった。

私に必要だったのは同情でも心配でもなく、大切にされているという実感だったんだ。

生きていても良いのだと。

先生、あの時、私のために泣いてくれてありがとう。

私、先生みたいになりたくて、今教師になって頑張ってるよ。

生徒はすんごい生意気だけど(笑)。

いつか私も先生のように、人のために笑ったり怒ったり泣いたり、愛情深い人になれるよう頑張ります。

関連記事

桜(フリー写真)

進学を願ってくれた母

僕の家は兄弟三人の母子家庭です。 母子家庭という事もあり、母は何も言わなかったけど家庭は火の車でした。 電気が止まった時も。 ガスが止まった時も。 中学の校納金…

キャンドル(フリー写真)

キャンドルに懸けた想い

僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重ねて怖くなったこと…

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

フライト(フリー写真)

相手を思い遣る心

国内線のCAとして、多い時で一日に 2,000人以上のお客様と接してきた私は、 『人の思いや気持ち(内面)は、日常の行動(外面)に現れる』 ことを学びました。 12…

万年筆(フリー写真)

涙の後には

ある漫画家志望の若者の話です。 彼が17歳の時。 短編漫画が準入選に選ばれ、担当編集者が付いてくれることになり、気を良くした彼は九州から東京に上京して来ます。 当時は…

病院

父の願いと医者への道

高校一年生の夏休み、両親から「大事な話がある」と呼び出されたとき、父が癌で余命宣告されていることを知りました。 私たち家族は商売をしており、借金も多く、父が亡くなれば高校に通う…

プリン・ア・ラ・モード(フリー写真)

誕生日会と親友

僕が小学4年生の時、10歳の誕生日会を開くことになった。 土曜日に仲の良い友達みんなに声を掛けた。 「明日来てくれる?」 みんなは、 「うん!絶対行くよ!」 …

犬(フリー写真)

盲導犬のサリー

私がかつて知っていた盲導犬のサリーの話です。 サリーはとても頭の良い犬でした。 盲導犬としての訓練を優秀な内容で終え、飼い主さんの元へ預けられました。 サリーは晴れ…

ベトナムの夕日(フリー写真)

あの子は僕の友達なんです

ベトナムの村にある宣教師たちの運営する孤児院が、爆撃を受けてしまいました。 宣教師達と二人の子供達が即死し、その他の者も重傷を負いました。 重傷になった者達の中でも、8才の…

虹(フリー写真)

道路に架かった虹

昨日、犬の散歩をしていた時の事。 20代後半くらいの男性が二人、作業着でマンホールを調べていた。 少し立ち止まって見ていたら、前から女子中学生が泣きながら歩いて来た。 …