命があるということ
普通に生きて来ただけなのに、いつの間にか取り返しのつかないガンになっていた。
先月の26日に、あと三ヶ月くらいしか生きられないと言われた。
今は無理を言って退院し、色々な人に会いに行っている。
湿っぽくなるのが嫌だから事情は話さず、体調の良い日は友達やお世話になった人と、いつもと変わらない感じでご飯を食べに行っている。
※
昨日は高校時代の恩師と行った。
その人は私にバイクに乗らないかと薦めてくれた人で、夏になると一緒にツーリングへ行っていた。
バイクはもう乗れないから、その人に譲ろうと思っていた。先生はその日もやはりバイクで来ていて、かなり羨ましかった。
ご飯を食べながら、色々話した。高校時代のことや、卒業してからも様々な相談に乗ってもらって、凄く嬉しかったということ。
そしたら、
「お前(私)が最近、他の奴ら(当時からの付き合いの友達など)とそういう話をしていて、様子がおかしいって聞いた。何かあったか?」
と聞かれた。
絶対に他の奴らには言わないで欲しいとお願いして、病気のことと余命のことを話した。
そして、先生にバイクを譲るということも言った。
大事に乗り続けると約束してくれた。
※
店を出てから、先生に
「まだ元気あるか?」
と聞かれた。
「座ってる分には大丈夫」
と答えると、
「ちょっと待ってて」
と言って、バイクで颯爽と走り去った。
何だか解らないけど、泣けた。
※
暫く店の駐車場で待っていたら、先生がホームセンターでメットを買って来た。
それを私にくれて、
「後ろ乗って」
と言った。
先生の腰に回した私の手は凄く頼りなくなっていて、すぐに振り落とされそうだった。
「乗りたいけどムリですわ」
と私が言うと、先生が着ていたTシャツを脱ぎ、私の手を括り付けてくれた。
先生も泣いていた。
それから初めて一緒に走った。近くの登山道へ行った。
凄くゆっくりなスピードだったけど。
※
展望台のようになっている所にバイク停め、ベンチで休んだ。
先生は、
「この後、凄く苦しむかもしれないし、辛いことも一杯あると思う。
その時は呼んでくれれば行くから。
生きてて良かったと思えることを、まだまだ作ろう。
まだ○○(私)は生きてるよ。諦めるな」
と言ってくれた。二人して号泣した。
※
誰に話して良いか分からないから、ここに書かせてもらいました。
週明けに病院へ戻ることに決めました。
正直、昨日告知されてから初めて、まだ生きていたいと思えたから。
分からないけど、もう少し足掻いてみます。
自己満足な文章でごめんなさい。
行って来ます。
※
友人の方からの投稿
ここの掲示板に上の文章を書いたのは、私の友達です。
『涙が出るほどいい話3.0』という板に書いてあるのだけど、見た人はまだここに居るのかな。居ないかも。
でも、そいつが亡くなって今日で丸三年。長文だけど書かせてもらう。
※
亡くなった後、そいつのパソコンを見たらデスクトップにテキストファイルがあった。
そこには彼女の書き込みと、それに対するレスがコピペして保存されていた。
ファイルのタイトルは『涙が出るほどいい話3.0』。
彼女が亡くなる数日前にお見舞いへ行った時、
「掲示板が見たい」
と言っていた理由が解った。
私たちは、
「大変な時に何言ってんだよ」
と笑い飛ばしたんだけど。
※
彼女はレスに励まされたんだと思う。
きっと感謝を書き込みたかったんだろうと思う。
そのテキストファイルを読んで、私は泣いた。
だから、彼女の代わりに言わせてもらう。
あの時、レスをくれた方々、ありがとうございました。
彼女は意識混濁状態にまでなりましたが、最期まで足掻き続けました。
皆さまに温かい励ましをいただいたおかげだと思います。
本当に、ありがとうございました。
彼女に代わり、お礼を申し上げます。