おばあちゃんの愛情

公開日: 家族 | 心温まる話 | 祖父母

受験(フリー写真)

俺の家庭は自分と母親、それとおばあちゃんの三人で暮らしている。

親父は離婚していない。パチンコなどのギャンブルで借金を作る駄目な親父だった。

母子家庭はやはり経済的に苦しく、母さんは毎日働いている。

おばあちゃんは汚い服ばかり着ている。

俺には行きたい大学がある。でもお金がかかるから本命の学校だけを受験し、駄目だったら就職しようと思っていた。

結局、俺は大学に落ちてしまった。

『すぐに就職先を見つけなきゃいけないな』

と考えていたら、俺の部屋におばあちゃんがやって来た。

「大学、落ちちゃったんだってね」

と、おばあちゃん。

「うん。でも良いよ。俺、就職するからさ」

と少し強がり、俺は笑って見せた。

するとおばあちゃんは、古くて汚い手提げ袋から札束を出した。

『え…。何、このお金…』

と俺が絶句していたら、

「行きたい大学があるんじゃろ? だったら行きんさい。

お金のことなら心配せんでええ。まず、これで予備校に行きんさい。

年寄りは金持ちやで。それに、ちょうどばあちゃんな、何かに使おうて思ってたんじゃ」

そう言いながら、皺々の手で札束を俺に握らせた。

そして俺の部屋から出る時、

「頑張りんさい」

とだけ言い残して出て行った。

それから俺、母さんにおばあちゃんのことを聞いたら、

「おばあちゃんね、あんたが産まれてからずっと年金をコツコツ貯めてたみたいだよ。私も知らんかった」

と言う。

本気で泣いた。

お金があるのに汚い服ばかり着ている意味や、さっき俺の部屋で喋ったことを思い出し、思い切り泣いた。

もう、本当に頑張るから。

今は肩を揉むことくらいしか出来ないけど、絶対に大学合格するから。

バイキングのお皿(フリー写真)

埃まみれのパンチパーマ

阪神大震災後の話。 当時、俺はあるファミレスの店員をしていて、震災後はボランティアでバイキングのみのメニューを無料で提供する事になった。 開店と同時に満席になって待ち列が出…

父の日のプレゼント(フリー写真)

見知らぬおじさん

私には妻が居たが、一人娘が1歳と2ヶ月の時、離婚することになった。 酒癖の悪かった私は暴力を振るうこともあり、幼い娘に危害が及ぼすことを恐れた妻が、子供を守るために選んだ道だった…

朝焼け(フリー写真)

天国の祖父へ

大正生まれの祖父は、妻である祖母が認知症になってもたった一人で介護をし、祖母が亡くなって暫くは一人で暮らしていた。 私が12歳の時に、祖父は我が家で同居することになった。 …

放課後の教室

恩師の愛情

私は高校2年生の時にうつ病になった。 切っ掛けは、2年半付き合った彼氏に振られたことと、友達から仲間はずれにされるようになったことだと思う。 毎日、泣いていた。 プ…

子供たち(フリー写真)

子ども達への無償の愛

『40年かけて35人の道に捨てられた子どもを拾い救って来た女性』 ある一人の女性に隠されたストーリーが、世界中に感動を与えている。 その女性とは、中国の楼小英(ロウ シャオ…

3508 かしま(出典: 海上自衛隊ギャラリー)

かしま艦長の見事な対応

2000年7月4日、20世紀最後のアメリカ独立記念日を祝う洋上式典に参加するため、世界各国の帆船170隻、海軍の艦艇70隻がニューヨーク港に集結した。 翌日の5日に英国の豪華客船…

電車内から見る駅のホーム(フリー写真)

おとうさんという言葉

その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回り大きくなっ…

炊き込みご飯(フリー写真)

母の炊き込みご飯

俺は小学生の頃、母の作った炊き込みご飯が大好物だった。 特にそれを口に出して伝えた事は無かったけど、母はちゃんと解っていて、誕生日や何かの記念日には、我が家の夕食は必ず炊き込みご…

乾杯(フリー写真)

変わらないもの

今まですれ違いが多くて、なかなか時間を取って話す機会のなかった父。 そんな父と時間を取って話す機会を得たのは、恥ずかしながら仕事でミスを連発して会社から叱責を何度も受けていた時…

婚約指輪(フリー写真)

玩具の指輪

高校生の頃の話。 小さな頃から幼馴染の女がいるのだが、その子とは本当に仲が良かった。 小学生の頃、親父が左手の薬指に着けていた指輪が気になって、 「何でずっと着けてる…