今は亡き僕の先生
僕は幼い頃から病弱で、いつも何かしらの病気にか罹っていた。
例えば、喘息、熱、インフルエンザなど。
そのような時はいつも診療所の先生に診ていただいていた。
その先生はとてもパワフルな人だった。
一日に何十人と患者を診て疲れているはずなのに、いつも元気で笑顔も絶やさない素敵な人だった。
そんな先生を僕は尊敬していた。
小学生の時も中学生の時も、僕が病気になった時はいつも診てくれていた。
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あれから月日が経ち、僕は高校生になった。
病弱だった自分にとって、病気にならない体になったことは憧れだった。
自分は憧れていたものになれたと思った。
しかし高校で虐めを受けるようになり、塞ぎ込んで家に引き篭もることが増えた。
そんな時、先生の診療所がカウセリングをしているのを知って行くことにした。
お話を聞いてくれたのは、幼い頃からお世話になっていた当時の先生だった。
ある日、いつものようにカウセリングに行くと、一枚の紙を渡された。
「この紙に嫌なことと好きなことを書いて、また来る時に渡して欲しい」
僕は悩みに悩んで書くことにした。
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明朝の起床時、家族が僕に告げた。
「先生、亡くなったんだって。
診察していた時に亡くなったって」
僕は一瞬、その言葉の意味が解らなかった。
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それから暫く経ち、診療所へ行った。
その時は先生の娘さんが後を継いで、診療所を切り盛りしていた。
先生が僕のことを色々話していたよ、と聞かされた。
学校で頑張っていたことや、体調面のこと。
来てくれた時にいつも色々なお話を聞けて、元気をもらっていたこと。
孫のように見ていて気にかけていてくれたこと。
そのお話を聞いて僕は泣いた。
涙が止まらなかった。止めようとしてもずっと涙が溢れた。
僕はあなたが居てくれたから頑張って来られた。
あなたが居てくれたから、病気も治った。
もっと生きていて欲しかった。
もっと色々な患者さんを診て欲しかった。
何で…。
もっとお話を聞いて欲しかった。
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それからまた月日が流れ、僕は大人になっていた。
定期的に先生のお墓参りに行き、いつも決まって出来事を報告するようにしていた。
亡くなる前、そう言えば先生と約束していたな。
何か誇りを見つけろ、と。
先生、僕の誇りはあなたです。
色々なことを教えてくれた先生。
今でもずっと先生のお墓参りに通っている。
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投稿者: 須藤様