おばあちゃんの愛情
俺の家庭は自分と母親、それとおばあちゃんの三人で暮らしている。
親父は離婚していない。パチンコなどのギャンブルで借金を作る駄目な親父だった。
母子家庭はやはり経済的に苦しく、母さんは毎日働いている。
おばあちゃんは汚い服ばかり着ている。
俺には行きたい大学がある。でもお金がかかるから本命の学校だけを受験し、駄目だったら就職しようと思っていた。
結局、俺は大学に落ちてしまった。
『すぐに就職先を見つけなきゃいけないな』
と考えていたら、俺の部屋におばあちゃんがやって来た。
「大学、落ちちゃったんだってね」
と、おばあちゃん。
「うん。でも良いよ。俺、就職するからさ」
と少し強がり、俺は笑って見せた。
するとおばあちゃんは、古くて汚い手提げ袋から札束を出した。
『え…。何、このお金…』
と俺が絶句していたら、
「行きたい大学があるんじゃろ? だったら行きんさい。
お金のことなら心配せんでええ。まず、これで予備校に行きんさい。
年寄りは金持ちやで。それに、ちょうどばあちゃんな、何かに使おうて思ってたんじゃ」
そう言いながら、皺々の手で札束を俺に握らせた。
そして俺の部屋から出る時、
「頑張りんさい」
とだけ言い残して出て行った。
※
それから俺、母さんにおばあちゃんのことを聞いたら、
「おばあちゃんね、あんたが産まれてからずっと年金をコツコツ貯めてたみたいだよ。私も知らんかった」
と言う。
本気で泣いた。
お金があるのに汚い服ばかり着ている意味や、さっき俺の部屋で喋ったことを思い出し、思い切り泣いた。
もう、本当に頑張るから。
今は肩を揉むことくらいしか出来ないけど、絶対に大学合格するから。