母ちゃんの弁当

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 |

お弁当(フリー写真)

中学1年生くらいの時は反抗期で、ちょっとツッパっていたりした。

「親の作った弁当なんかダサくて食えるか。金よこせよ、コンビニで買うから!」

と母ちゃんに言ったことがあってさ…。

それからは金を貰って、昼休みに学校を抜け出しては買い食いするようになったんだ。

大人になってから親父から聞いたのだけど、母ちゃんはその時、俺には分からないようにベソをかきながら親父に愚痴ったらしい。

親父はブチ切れて俺をぶっ飛ばそうとしたらしいんだけど、母ちゃんは

「あの子だって年頃だし、かっこつけたいんだからしょうがないの!」

と逆に俺を庇ったらしい。

そして、毎日昼飯代として千円ずつくれていた。小遣いとは別に。

数年後、大学生になった俺はオタク化し、バイト代を趣味に注ぎ込むようになったら慢性的金欠になった。

親父からは、

「小遣いは一切やらん!」

と言われていた…。

とにかく金欠過ぎて、激安の学食ですら食えないから、

「弁当作ってくれないか」

と、母ちゃんに頼んだんだよね。

反抗期時代の自分の発言なんてコロッと忘れて。

そしたら母ちゃんが泣きながら怒り出して、言ったんだ。

「もう、ダサくて食えないなんて、二度と言わないなら、作ってあげるわよ…いくらでも…」

俺は自分の発言を思い出して、愕然とした。

そんな思い出がある俺としては、やっぱり弁当ネタは泣ける。

関連記事

ハンバーグ(フリー写真)

幸せな食卓

結婚して子供が出来て、ホカホカした食卓にみんな笑顔で並んでたりして、時々泣きそうなほどの幸せを噛み締める。 荒みじんの玉葱が入ったでっかいハンバーグや、大皿一杯の散らし寿司。妻と…

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

万年筆(フリー写真)

わすれられないおくりもの

生まれて初めて、万年筆をくれた人がいました。 私はまだ小学4年生で、使い方も知りませんでした。 万年筆をくれたので、その人のことを『万年筆さん』と呼びます。 万年筆…

彼女(フリー写真)

忘れられない暗証番号

元号が昭和から平成に変わろうとしていた頃の話です。 当時、私は二十代半ば。彼女も同じ年でした。 いよいよ付き合おうかという時期に、彼女から私に泣きながらの電話…。 「…

差し伸べる手(フリー写真)

俺を育ててくれた兄貴

俺を育ててくれた兄貴が正月に結婚したんだ。 兄貴と言っても、血は繋がっていないけれど。 ※ 自分が5歳の時に親父が死んでから、母親が女手一つで育ててくれた。 親父と結婚…

母猫(フリー写真)

母猫の選択

Rの実家は猫好きな一家で、野良猫に餌をあげているうちに、家中猫だらけになってしまったそうだ。 住み着いた猫が仔を作り、その仔もまた仔を作る。 一時は家庭崩壊しかけたほど猫が…

星空

天国でも携帯が

妹からの最後のメールを読んだ時、命の尊さと、失った者の残された悲しみがどれほど深いかを痛感しました。妹は白血病で苦しみ、わずか14歳でこの世を去りました。彼女が2歳半の時に病気が発覚…

野球

懐かしの大声援

実家の母親は一人暮らしです。父親は健在ですが、6年前から施設に入っています。そのため、2年前に実家近くに家を買いました。しかし、私は県外で単身赴任中のため、私の家族が実家を頻繁に訪れ…

初期の携帯電話(フリー写真)

母と携帯電話

15年前の話です。 今でもそうだが人付き合いの苦手な俺は、会社を辞め一人で仕事を始めた。 車に工具を積み、出張で電気製品の修理や取り付けをする仕事だ。 当時はまだ携帯…

クリスマスツリー

サンタさんへ ― 6歳の願いごと

クリスマスの数日前、6歳の娘が、欲しいものを手紙に書いて窓際に置いていました。 ピンクのキティちゃんの便箋が、丁寧に折りたたまれていて。 「何が欲しいのかなぁ」と、私と夫…