とうちゃんの卵焼き
妻の入院中、北海道十勝の酪農家である私が、息子の遠足の弁当を作ることになりました。牛乳を入れすぎて崩れた卵焼きと、まだ字の書けない四歳が渡してくれた一枚の手紙。…
子供の言葉は、まっすぐで、予想もしないところを突いてきます。子供にまつわる泣ける話には、純粋さと愛情と、親としての涙があります。子育て中の方にも、子供だったあなたにも、ぜひ読んでほしい短編です。
妻の入院中、北海道十勝の酪農家である私が、息子の遠足の弁当を作ることになりました。牛乳を入れすぎて崩れた卵焼きと、まだ字の書けない四歳が渡してくれた一枚の手紙。…
妻の連れ子だった娘を、鬼瓦を彫る職人の私は十二年かけて育てました。血の繋がらない父娘に向けられた世間の冷たい目、そして結婚式で娘が静かに明かした「鬼の裏に彫られ…
尾道の坂下の小さなパン屋に毎週日曜、若い父と三歳の男の子が来る。注文はクリームパンと『おかーちゃんのぶん』。眠り続ける母への贈り物と思われたパンに隠された、三歳…
四つになった娘が、ある日ぱったり泣かなくなりました。ばあばと約束したのだと言います。提灯屋の父が祭りの夜にようやく知った、枕元の小さな灯りの意味。湖北の雪深い宿…
四歳の私に母は「日曜日かな」と言い残して出て行きました。筑豊の炭住で玄関を見つめ続けた三十年、物干しの黄色い洗濯ばさみだけがなぜ褪せなかったのか。祖母の手帳と五…
雪深い温泉町で、十九歳の私は独りで娘を育てていました。玄関の履物をいつもそろえてくれた咲。あの子が遺した小さな習慣の本当の意味に私が気づいたのは、何年もあとのこ…
雨の河原で拾った柴犬のむぎは、十二年のあいだ家族の真ん中にいてくれました。その別れに泣き崩れ抜け殻のようになった私を、もう一度前へと歩かせてくれたのは、まだ小さ…
長い不妊の時を越えて、ようやく授かった我が子へ、父が静かに綴った一通の手紙です。つわりに耐えた母、陣痛の朝、生まれた瞬間に泣いた家族。君は生まれてきただけで価値…
妻を病で亡くし、四歳の息子と二人になった父。ある日、息子が急に「ひらがなを教えて」と言い出します。その理由を保育園の先生から電話で聞かされたとき、父は台所の床に…
七歳の息子がサンタさんへの手紙に書いたのは、おもちゃではなく『お父さんの咳が止まるお薬』でした。重い病を抱えた夫と、偽りの薬に込めた親の祈り。クリスマスの朝に交…
妻を亡くした港町の調律師に残されたのは、八歳の娘と三歳の息子でした。幼稚園の運動会『おやこでダンス』、入場門に駆け出した小さな影――藍色の割烹着と子守歌が紡ぐ、…
六歳の娘が、こづかいを少しずつ貯めて、買おうとした、たった一つの願い。妻を亡くし印刷工場で残業に追われる父と娘の絆を描いた泣ける話です。本当に大切なものを置き去…
五歳の夏、海辺の小さな町で自転車屋を営む父が、ひとりで大切に育ててきた娘の七海が、何の前ぶれもなく逝きました。父が冬じゅうかけて組み直した赤い自転車、四百二十円…
北の海へ半年ごとに出る漁師の父をめぐる、泣ける話の短編です。父は暗い部屋で娘の寝顔をそっと覗いては、声を殺して泣いていました。忘れられるのが怖かったのだと、父は…