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彼が灯さなかった分校

昭和三十四年の奥能登。電気の来ない集落の分校で、十九歳のわたしは毎晩ランプの火屋を磨いていた。ようやく電線が届いた夜、村中に灯りがともるのに、分校だけが暗いまま…

父が捨てなかった種袋

父の種袋には、売れ残りの古い種が入っているのだと思っていました。無口な父を見送り、二十四で小さな種苗店を継いだ春、私は触るなと言われた一番上の棚に手を伸ばします…

彼は私の名前を履いていた

昭和三十六年、堤防工事の飯場から転校してきた幼なじみに、私は兄のお下がりの運動靴を貸しました。学級費が消えた日、私は教室で黙りました。四十年後、同じ堤防の改修工…