特攻隊員の方の手紙

公開日: 悲しい話 | 戦時中の話

椅子と聖書(フリー写真)

お母さん、とうとう悲しい便りを出さねばならない時が来ました。

晴れて特攻隊員に選ばれ出陣するのは嬉しいですが、お母さんのことを思うと泣けて来ます。

母チャン、母チャンが 私を頼みに必死で育ててくれたことを思うと、何も喜ばせることが出来ずに、安心させることも出来ずに、死んでゆくのが辛いです。

母チャンが私にこうせよと言われたことに反対して、とうとうここまで来てしまいました。

私として希望通りで嬉しいと思いたいのですが、母チャンの言われるようにした方が良かったかなあと思います。

でも私は技倆抜群として選ばれたのですから喜んでください。

私ぐらいの飛行時間で第一線に出るなんて、本当は出来ないのです。

ともすれば、母チャンの傍に帰りたいという考えに誘われるのですけれど、これはいけないことなのです。

洗礼を受けた時、アメリカの弾に当たって死ぬより前に、汝を救うものの御手によりて殺すのだと言われましたが、これを私は思い出しております。

全てが神様の御手にあるのです。

神様の下にある私たちには、この世の生死は問題になりませんね。

私はこの頃、毎日聖書を読んでいます。

お母さんの近くにいる気持ちがするからです。

私は聖書と賛美歌を飛行機に積んで突っ込みます。

お母さんに祈って突っ込みます。

出撃前日

関連記事

青い花(フリー写真)

ママの棺

この間、1歳半の息子を連れて友人の家へ行った時に、友人の祖母から聞いた話です。 ※ 友人がちょうど1歳半の時、お母さんが癌になったそうです。 気付いた時にはもう手遅れで、一ヶ…

恋人(フリー写真)

一番大切な人

当時21歳の私と倫子は、その日ちょっとしたことで喧嘩をしてしまった。 明らかに私が悪い理由で。 普段なら隣同士で寝るのに、この日は一つの部屋で少し離れて寝た。 ※ 19…

桜(フリー写真)

戦友を弔うために

インドで傭兵としてパキスタン軍と対峙していた時、遠くから歌が聞こえてきた。 知らない言葉の歌だったが、味方のものではないことは確かなので、銃をそちらに向けた。すると上官に殴り飛ば…

赤ちゃんの手を握る母の手

最後の親孝行に

無職、片桐康晴被告は、京都市伏見区桂川河川敷で2006年2月1日、認知症の母親の介護で生活苦に陥り、母親を殺害し自身も無理心中を図った。 その事件の初公判は19日に行われた。 …

繋がれた手(フリー写真)

彼との最後の夜

一年間、同棲していた彼が他界した。 大喧嘩をした日、交通事故に遭ったのだ。 本当に突然の出来事だった。 ※ その日は付き合って三年目の記念すべき夜だった。 しかし…

交差点(フリー写真)

家族の支え

中学時代、幼馴染の親友が目の前で事故死した。 あまりに急で、現実を受け容れられなかった俺は少し精神を病んでしまった。 体中を血が出ても止めずに掻きむしったり、拒食症になった…

カップル(フリー写真)

大好きだった彼

あれは今から1年半前。大学3年になりたての春。 大学の授業が終わり、帰り支度をしている時に携帯が鳴った。 着信画面を見ると、彼の親友でした。 珍しいなと思って電話に出…

親子(フリー写真)

娘が好きだったハム太郎

娘が六歳で死んだ。 ある日突然、風呂に入れている最中に意識を失った。 直接の死因は心臓発作なのだが、持病の無い子だったので病院も不審に思ったらしく、俺は警察の事情聴取まで受…

病室(フリー写真)

妹からの最後のメール

妹からの最後のメールを見て、命の尊さ、居なくなって残された者の悲しみがどれほど苦痛かを実感します。 白血病に冒され、親、兄弟でも骨髄移植は不適合でドナーも見つからず、12年間苦し…

北部ソロモン諸島(ブーゲンビル島)の戦い

貴様飲め!

俺のおじいちゃんは戦争末期、南方に居た。 国名は忘れたけど、とにかくジャングルのような所で衛生状態が最悪だったらしい。 当然、マラリアだのコレラだのが蔓延する。 おじ…