祖父の傷跡

公開日: 悲しい話 | 戦時中の話

従軍(フリー写真)

俺の爺さんは戦地で足を撃たれたらしい。

撤退命令が出て皆急いで撤退していたのだが、爺さんは歩けなかった。

隊長に、

「自分は歩けない。足手まといになるから置いて行って下さい」

と言うと、黙って何時間も背負って逃げてくれたらしい。

撤退場所に着いて応急手当が終わり、お礼を言おうと隊長を探すと、上官は再び出撃の準備をしていたらしい。

「ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

と泣きながら言うと、隊長が

「お前は怪我をしているから日本に帰れる。俺は今から祖国の為に戦って来る。多分生きて日本には帰れないだろう」

と言った。爺さんは、

「自分もここに残ります」

と言いかけたところで、

「泣く事は無い。死ねば日本に帰れる。靖国で会おう」

と上官は言っていたらしい。

爺さんの足には酷い傷跡が残っていたのだが、その傷を見る度にその隊長を思い出すらしい。

爺さんはもう亡くなってしまったのだけど、亡くなる少し前に

「死んだら隊長に会える。やっときちんとお礼を言える。随分遅くなってしまった」

と呟いていたよ。

関連記事

老犬(フリー写真)

苦渋の決断

22歳になるオスの老犬が来ました。 彼は殆ど寝たきりで、飼い主が寝返りを打たせているので、床ずれが幾つも出来ていました。 意識はしっかりしているのですが、ご飯も飼い主が食べ…

妊婦さんのお腹(フリー写真)

母子手帳

今年の6月に母が亡くなった。火事だった。 同居していた父親は外出していて、弟は無事に逃げる事が出来たのだけど、母親は煙に巻かれて既に駄目だった。 自分は違う地方に住んでいた…

犬(フリー写真)

ペットとの別れ

レオと出会ったのは、私が3歳の時。 山奥の綺麗な川へバーベキューしに向かっていると、運転していた父が 「あそこに犬がおる!」 と言って車を停めた。 窓を開けて見…

朝焼け空(フリー写真)

自衛隊最大の任務

「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります…」 焼け野原に立つ避難所の一角で、その青年は拡声器を握り締め話し始めた。 真っ赤に泣き腫らした瞳から流れる涙を拭いながら…

月(フリー写真)

月に願いを

俺は今までに三度神頼みをしたことがあった。 一度目は俺が七歳で両親が離婚し、父方の祖父母に預けられていた時。 祖父母はとても厳しく、おまけに 「お前なんて生まれて来な…

病室(フリー写真)

妹からの最後のメール

妹からの最後のメールを見て、命の尊さ、居なくなって残された者の悲しみがどれほど苦痛かを実感します。 白血病に冒され、親、兄弟でも骨髄移植は不適合でドナーも見つからず、12年間苦し…

阪神・淡路大震災(フリー写真)

色褪せたミニ四駆

小学4年生の時の1月15日、連休最初の日だったかな。 いつものメンバー5人で、俺の住んでいたマンションで遊んでいた。 当時はミニ四駆を廊下で走らせ、騒いでは管理人さんによく…

日記(フリー写真)

最後の日記

小学校の時、虐められていた。 消しゴムを勝手に使われたので怒ったら、相手が学年のボス格の女子。 それ以来、クラスから無視された。 それが中学に入っても変わらず、真剣に…

旧日本兵の方(フリー写真)

やっと戦争が終わった

祖父が満州に行っていたことは知っていたが、シベリア行きが確定してしまった時に、友人と逃亡したのは知らなかった。 何でも2、3日は友人たちと逃亡生活を過ごしていたが、人数が居ると目…

広島平和記念碑 原爆ドーム(フリー写真)

忘れてはならない

今日が何の日かご存知であろうか。知識としての説明は必要ないだろう。 だが一歩その先へ。それが、自分の経験であったかもしれないことを想像して頂きたい。 向こう70年、草木も生…