大好きな芸人

公開日: ちょっと切ない話 | 仕事

公園と夕暮れ(フリー写真)

芸人の江頭さんがとある公園でロケをしていると、公園の隣にある病院から抜け出して来ていた車椅子の女の子がそのロケを見ていた。

ロケが終わり、その車椅子の女の子は江頭さんに

「つまらねーの」

と呟いた。

それを耳にした江頭さんは当然、

「お前、もう一度言ってみろ」

と怒鳴った。

すると車椅子の女の子は、

「だって全然面白くないんだもん」

と呟いた。それを聞いた江頭さんは、

「なら、お前が笑うまで毎日ここでネタを見せてやろうか」

と言った。

そして、断言通り毎日仕事の合間にその公園に行っては、車椅子の女の子にネタを見せ続けたのだ。

しかし車椅子の女の子を笑わせるどころか呆れさせていたのは言うまでもない。

一ヶ月が過ぎた頃、毎日のように散歩に来ていた車椅子の女の子が突然、来なくなってしまった。

次の日も女の子は姿を現さなかった。

そして一週間が過ぎたある日、女の子がふと現れたのだ。

江頭さんはすかさず駆け寄り、いつものくだらないネタを見せた。

しかし、いつもは全く笑ってくれない女の子が初めて少し笑ってくれた。

江頭さんは調子に乗り、下ネタを連発してやった。

女の子は当然、

「それは最低…」

と一言。

そして日も暮れ、江頭さんが

「また、明日も来るから、ちゃんと待ってろよ」

と言うと、女の子は

「勝手に来れば!!」

と言った。

次の日、女の子は公園には訪れなかった。

江頭さんは頭にきて隣の病院へ行き、車椅子の女の子を探した。

担当の看護婦を見つけて事情を尋ねると、女の子の容体が急に悪化して今朝他の病院に運ばれ、昏睡状態だという事を知らされた。

そして、看護婦に女の子の日記を渡された。

そこには『大好きな芸人、江頭』と書かれていた。

十年経った現在でも、月に一度はその公園に来ては花を手向け、一人でネタを披露するそうだ。

関連記事

冬と春の境界(フリー写真)

人間としての愛

1月の朝がとても寒い時に、必ず思い出す少年がいます。 当時、私は狭心症で休職し、九州の実家にて静養していた時でした。 毎朝、愛犬のテツと散歩していた時に、いつも遅刻して実家…

カラオケのマイク(フリー写真)

お金以上のもの

パパ、ママ、小学生の三姉妹の仲良し五人家族。 ある日、ママが交通事故で亡くなってしまいました。 慣れない家事にお父さんも奮闘。 タマゴ焼きを焦がしたり、洗濯物を皺だら…

花(フリー写真)

母が見せた涙

うちは親父が仕事の続かない人で、いつも貧乏だった。 母さんは俺と兄貴のために、いつも働いていた。ヤクルトの配達や、近所の工場とか…。 土日もゆっくり休んでいたという記憶は無…

恋人同士(フリー写真)

彼の真意

今年の5月まで付き合っていた彼の話。 料理が好きで、調理場でバイトをしていた。 付き合い始めの頃、私が作った味噌汁に、溶け残りの味噌が固まって入っていたことがあった。 …

炊き込みご飯(フリー写真)

母の炊き込みご飯

俺は小学生の頃、母の作った炊き込みご飯が大好物だった。 特にそれを口に出して伝えた事は無かったけど、母はちゃんと解っていて、誕生日や何かの記念日には、我が家の夕食は必ず炊き込みご…

夕日(フリー写真)

祖父母からのお小遣い

自分には77歳のばあちゃんがいる。 数ヶ月前にじいちゃんが亡くなり、最近はあまり元気が無い。 ばあちゃんの家には車で20分程で行ける距離だから、父と定期的に行くようにしてい…

犬(フリー写真)

愛犬が繋いだ絆

11年間、飼っていた愛犬が亡くなった。 死ぬ前の半年間、自分はろくに家に帰らず、世話も殆どしなかった。 その間にどんどん衰えて行っていたのに、あまり見ることも触ることもなく…

母に渡す花(フリー写真)

お母さんの看病がしたいよ

19歳の頃、癌で入院中のお母さんに、泊り込みで付き添っていた。 その頃、私は予備校に行っていた。 お母さんが 「看護婦さんになって欲しい」 と言ったから、一つく…

ネックレス(フリー写真)

大好きなあなた

大好きなあなたは、今も笑っているのでしょうか。 小さい頃に何故かおじいちゃんに引き取られた私(当時7歳)は、そこで三人の男の子に出会いました。 9歳の凄く元気なLと、12歳…

手を握る(フリー写真)

ごうちゃん

母が24歳、父が26歳、自分が6歳の時に両親は離婚した。 母が若くして妊娠し、生まれた自分は望まれて生を受けた訳ではなかった。 母は別の男を作り、父は別の女を作り、両親は裁…