ぴーちゃんとの思い出

公開日: ちょっと切ない話 | ペット

コザクラインコ(フリー写真)

10年前に飼い始めた、コザクラインコのぴーちゃん。

ぴーちゃんという名前は、子供の頃からぴーぴー鳴いていたから。

ぴーちゃんは、飛行機に乗って遠く九州から東京にやって来ました。

宅急便の箱の中を開けたら、きょとんとして周りを見渡していました。

餌を上げるとバクバクと食べ始めました。

それからは毎日、追い掛けっこをして遊びました。

やがて大人になり、手に噛み付くようになり、コザクラインコ特有の狂暴性を身に付けました。

それでも、手の中に入ったり、肩に乗って体を震わせたりして、甘えていました。

そんなぴーちゃんも、もう10歳になりました。

この頃になると、羽の力が弱くなったのか飛ぶことができなくなりました。

トコトコと歩いて、籠から出て、トコトコと歩いて籠に戻って行きました。

やがて体温調節もできなくなったのか、籠の中でうずくまっていることが多くなりました。

人間と同じような老衰になってしまったのでしょう。

電気のヒーターを買ってあげると、そこで体を必死に温めていました。

コザクラインコには、自分がどうなってしまったのか解らないのでしょう。

ひたすら具合の悪さを改善しようとしていました。

いずれ籠にも入れなくなり、籠の上で生活するようになりました。

鳥の習性でしょうか。その状態になっても、寝床を汚さないように、フンをする時は下に落とすために隅に移動します。

そんな状態が数日続いたある日、ぴーちゃんが落ちる音がしました。

見ると、籠の上から転落し、仰向けになってもがいていました。

ぴーちゃんを手で拾い上げると、一度強く噛み、そのまま息絶えてしまいました。

恐らくフンをするため隅に移動して、そのまま転落してしまい、弱っていた心臓が停止してしまったのでしょう。

本当に手が掛かる鳥でしたが、楽しい思い出を残してくれました。

さようなら、ぴーちゃん。

関連記事

彼女(フリー写真)

忘れられない暗証番号

元号が昭和から平成に変わろうとしていた頃の話です。 当時、私は二十代半ば。彼女も同じ年でした。 いよいよ付き合おうかという時期に、彼女から私に泣きながらの電話…。 「…

結婚式(フリー写真)

一生忘れない結婚式

本人から聞いたのか共通の友人から聞いたのかあやふやだけど、その子は物心付く前にお母さんが亡くなって、父親に育てられたという話は耳にした事があった。 結婚式後に聞いた話だけど、何か…

ちゃぶ台(フリー写真)

色褪せた家族写真

一昨年、ばあちゃんが死んだ。 最後に会ったのは、俺が中学生の時だったかな。 葬式の為に20年越しで、ばあちゃんの住んでいた田舎に行った。 次の日、遺品の整理をする為に…

ベゴニア(フリー写真)

初めて好きになった人

俺が小学6年生の頃の話。 俺は当時、親の転勤で都会から田舎へと引っ越しをした。時期はちょうど夏休み。全く知らない土地で暮らすのはこれで五回目だった。 引っ越しが終わり、夏休…

ファミコン(フリー写真)

消えた冒険の書

私には、兄が居ました。 三つ年上の兄は、妹思いの優しい兄でした。 子供の頃はよくドラクエ3を兄と一緒にやっていました(私は見ているだけでした)。 勇者が兄で、僧侶が私…

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

手を組む女性(フリー写真)

恋人からの手紙

昨日、恋人が死んじゃったんです。病気で。 そしたらなんか通夜が終わって、病院に置いて来た荷物とか改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛ての手紙が入ってたんです。 で、よく…

スマートフォン

父の遺した言葉

私は今、高等学校3年生です。父がこの世を去ったのは10月26日のことでした。 父は、私が心から尊敬し、誇りに思える素晴らしい人でした。彼の死に際して、母と妹は慟哭しました。 …

バー(フリー写真)

大好きな姉

20歳を迎えたその日、姉が雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。 初めてのバーに圧倒されている俺を見て、姉は 「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみたい」 …

恋人同士(フリー写真)

がんばろうや

親父がサラ金で借金を作って逃げた。 それで、とうの昔に別居していた母さんと住む事になった。 友達にも母さんにも明るく振る舞っているけど、正直参っている。 「あんたは強…