リードを噛み千切り

公開日: ペット | 心温まる話 |

ドーベルマン(フリー写真)

普段は俺のことをバカにしまくっているドーベルマンのロッキー。

しかし小学生の時、ロッキーは俺を助けてくれた。

お袋の実家に帰省していた時、近所の大きな川にロッキーと一緒に遊びに行った。

川の石を渡って真ん中まで辿り着いた時、足元のコケに滑らせて転落してしまった。

落ちた場所はギリギリ足が着く深さだったのだが、流されるうちに深い場所に行ってしまい、パニクった俺は泳ぐことも忘れ溺れて行った。

釣り人はもっと上流の方に行かなければ居ないし、道路からも遠いので、溺れながらも必死で叫んでも誰も来ない状況。

しかも川の水は冷たく、段々力が抜けて行って、死を覚悟し始めた頃…。

目の前にロッキーが居て、俺のシャツを噛み、川の岸に運んでくれた。

正直、ロッキーが来るのは有り得ないと思っていた。

だって俺はロッキーが逃げないようにリードを階段の手すりに結んでいたから。

どうやってロッキーは来られたんだろうと思い、水を吐き落ち着いてからロッキーを見ると、リードが噛み千切られていた。

余程暴れたのか、首からも血が出ていて、こんなに必死になって俺のことを助けてくれたのかと思うと、小学生ながらも感動して号泣した。

それ以来、ロッキーは俺のヒーロー。

もしロッキーに何かがあったら、次は俺が助けてやりたいと思う。

関連記事

震災の日

サンタから預かったDS

私は、宮城県に住んでいる。 その日も朝から、寒空の下、スーパーの前に長い列ができていた。 並んでいた私の前には、母親と、泣きべそをかいた小さな男の子がいた。 ※ …

秘密

豊かさの秘密

アメリカのとある大富豪が、十人のエージェントにある事を世界中で調査するように命じました。 それは「貧乏人が必ず金持ちになる方法はあるか」「金持ちが金持ちで居続けることができる方…

手紙を書く手(フリー写真)

寂しい音

ある書道の時間のことです。 教壇から見ていると、筆の持ち方がおかしい女子生徒が居ました。 傍に寄って「その持ち方は違うよ」と言おうとした私は、咄嗟にその言葉を呑み込みまし…

結婚式場(フリー写真)

叔父さんの血

俺には腹違いの兄貴が居る。 俺が小学5年生、兄貴が大学生の時に、両親が子連れ同士の再婚。 一周りも年が離れていたせいか、何だか打ち解けられないままだった。 ※ 大学入試…

病院

父の願いと医者への道

高校一年生の夏休み、両親から「大事な話がある」と呼び出されたとき、父が癌で余命宣告されていることを知りました。 私たち家族は商売をしており、借金も多く、父が亡くなれば高校に通う…

カップル(フリー写真)

秘密で手話を

待ち合わせた彼女を待っていて見かけたのは、大学生風のカップルだった。 男の子が女の子の正面に立って、何かしきりに手を動かしていた。手話だ。 彼はやっと手話を覚えたこと、覚え…

柴犬(フリー写真)

おばあちゃんと柴犬

昔の話だが、近所に旦那さんに先立たれ、独り暮らしをしているお婆ちゃんが居た。 お婆ちゃんは室内で柴犬を飼っていた。 嫁いだ娘さんや孫たちがしょっちゅう様子を見に来ていたから…

満員電車(フリー写真)

子供を大切に

父が高校生の時に、僕の祖父が死んだ。 事故だった。 あまりの唐突な出来事で我が家は途方に暮れたらしい。 そして父は高校を卒業し、地元で有名な畜産会社に入社した。 …

金魚すくいをする女の子(フリー写真)

兄妹の金魚すくい

俺が打っている店(金魚すくい)に、兄妹と思われる7歳ぐらいの女の子と、10歳ぐらいの男の子がやって来た。 妹は他の子供たちが金魚すくいをしているのを興味津々で長い間見ていたが、や…

キャンドル

もどれない過去と、隣にある幸せ

僕が会社を辞めたのは、24歳のときだった。 理由は、当時の上司の姿に未来の自分を重ねてしまったから。 彼は会社の駐車場で寝泊まりし、わずかに見られるのは子どもたちの寝顔だ…