黒猫の赤ちゃん

公開日: ペット | 悲しい話 |

黒猫(フリー写真)

小学校の時、裏門の所に小さな黒猫の赤ちゃんが捨てられていた。

両目とも膿でくっついていて、見えていない様子。

どうしても無視できなくて家へ持って帰ったら、やはり飼っては駄目だと言われた。

近所の家の庭の近くに置いて来なさいと言われ(そこの家は野良猫に餌をあげていたらしいので)、泣く泣くその家の庭の近くにそっと置いて来た。

数日経ってその近くを通り掛かった時、みゃーみゃーという子猫の声を聞いた。

もしやと思ったら、やはりあの時の黒猫だった。

がりがりに痩せていて、体中に蚤が付いていて、もうどうしても放っておけなくて連れて帰った。

親にはいっぱい頭を下げて、自分が全て責任を持つからと頼み込み、どうにか飼うことを許してもらった。

ミルクをあげて、体を洗ってあげて、湯たんぽを入れてあげて、と子供ながらに色々してあげたんだけれど、一週間も経たないうちに死んでしまった。

死んでしまった日の前日の夜、いつもは枕元の箱の中で寝ている子猫が、何故か初めて私の布団の中に潜り込んで来た。

でも私は潰してしまうのがイヤだったし、まだ蚤がいたら嫌だなと思い箱に戻した。

その次の日の朝、子猫は冷たくなってしまっていた。

もしかしたら寒かったのかな。

一緒に寝てあげれば良かった。

最初にもっとちゃんと親に頼んで、飼ってあげられたら良かった。

子供だったから何の知識も無くて、もしかしたら私のせいで死んじゃったのかも。

病院にも連れて行ってあげられなかった。

まだ本当ににちっちゃい子猫だったのに。

本当にごめんね。

関連記事

飛行機雲(フリー写真)

きっと天国では

二十歳でヨーロッパに旅をした時の実話をいっちょう。 ルフトハンザの国内線に乗ってフランクフルト上空に居た時、隣に座っていたアメリカ人のじい様に話し掛けられた。 日本は良い国…

高校生(フリー写真)

ほら、笑いなよ!

高校2年生の夏、僕は恋をした。 好きで好きで堪らなかった。 その相手を好きになった切っ掛けは、僕がクラスで虐めに遭い落ち込んでいた頃、生きる意味すら分からなくなり教室で一人…

花

またどこかで会おうね

私は以前、病院で働いていました。看護師や医者ではなく、病院の清掃員です。 ある日、何も知らずに一つの病室に掃除のために入りました。部屋に入ると、そこにいたのはもうすぐこの世を去…

可愛い犬(フリー写真)

ボロという犬の話

小学3年生の時、親父が仕事帰りに雑種の小犬を拾って来た。 黒くて目がまん丸で、コロコロとした可愛い奴。 でも野良なので、小汚くて毛がボロボロに抜けていた。 そんな風貌…

柴犬

最後まで守った芝犬

昔、私の近所に、亡き夫を偲びながら一人暮らしをしていたお婆ちゃんがいました。彼女の家には一匹の柴犬がいて、その犬はお婆ちゃんの日々の寂しさを癒していたようです。 お婆ちゃんは心…

玩具にじゃれる白猫(フリー写真)

待っていてくれた猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭に居た。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

どんぐり(フリー写真)

どんぐり

毎年お盆に帰省すると、近くの川で『送り火』があります。 いつもは淡い光の列がゆっくり川下に流れて行くのを眺めるだけなのだけど、その年は灯篭に『さちこ』と書いて川に浮かべました。 …

柴犬

ナオと歩いた家族の時間

昔、我が家では一匹の犬を飼っていた。 名前はナオ。 ナオは、ご近所の家で生まれた子犬だった。 その子犬を、うちの妹が、誰にも相談せずに勝手に連れて帰ってきたのが始ま…

朝焼け空(フリー写真)

自衛隊最大の任務

「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります…」 焼け野原に立つ避難所の一角で、その青年は拡声器を握り締め話し始めた。 真っ赤に泣き腫らした瞳から流れる涙を拭いながら…

戦闘機

戦場の軍医と従兵の絆

先日、私は大伯父の葬儀に参列しました。読経の声が静かに流れる中、私は大伯父がかつて語った、唯一の戦争の話を思い出していました。 医師であった大伯父は軍医として従軍し、フィリピン…