結婚式場の小さな奇跡

公開日: 仕事 | 心温まる話 | 恋愛 | 長編

新郎新婦(フリー写真)

栃木県那須地域(大田原市)に『おもてなし』の心でオンリーワン人情経営の結婚式場があります。

建物は地域の建築賞を受賞(マロニエ建築デザイン賞)する程の業界最先端の建物、内容、設備です。

一見敷居がかなり高く感じ取る方もいらっしゃるようですが、決してそんな事はありません。

少人数の食事会や、幼稚園の発表会など、ご来館頂いた方に『おもてなし』をする事に日々魂を込めております。

この事をこちらの有限会社勝田屋代表取締役川永作衛様は『凡事入魂』と仰られています。

日々数々のドラマがありますが、そんな中から一つだけエピソードをご詳細させて頂きます。

オープンを3ヶ月後に迫ったKATSUTAYA(結婚式場)で結婚式が半年後に決まり。幸せいっぱいのカップルがいました。

その半年後に結婚を控えている幸せいっぱいのカップルから、KATSUTAYAに一本の電話がありました。

「結婚式を取りやめたいのです」

突然の出来事に、受話器を握る川永社長が

「どうしたのですか? よろしければ、何があったかお話してくれませんか?」

と尋ねると、

「実は、新郎になる彼に癌が見つかったのです。

私は結婚式をしたいのですが、お互いの両親が結婚式を中止した方が良いと言いまして…」

今にも泣き出してしまいそうな彼女に川永社長は、

「事情は解りました。中止にしますが、折角楽しみにしていた結婚式です。来月には式場が完成しますので、一度KATSUTAYAを観にいらしてください」

と応えて電話を切りました。

KATSUTAYAが完成し、川永社長はブライダルフェアに一組のカップルを招待していました。

結婚式を中止したカップルです。両家のご両親も一緒に。

新郎になるはずの彼は、車椅子で式場に来られました。

川永社長に車椅子を押してもらい、カップルは夢に見ていた式場を一通り案内してもらいました。

新郎が結婚式ができないと諦めていたとの事でしたが、その事を体験すると不思議と希望と勇気が湧いてきました。

そして、必ずここで結婚式をやるぞ、そのためには必ず癌を治して見せる。そう強く心に誓えたように思います。

彼女は帰り際に、

「彼の癌が治ったら、ここで結婚式がしたい」

と川永社長に言って帰って行ったそうです。

その3ヶ月後に川永社長に電話が掛かって来ました。

「KATSUTAYAで結婚式ができます」

嬉しい報告をくれたのは彼女です。

「あれから彼の体調が良くなって、癌が消えて失くなった」

と言い、喜んで電話をくれたのです。

彼女はどうしても彼と結婚がしたくて、式場を観た後に改めて結婚の約束をしたそうです。

無事にKATSUTAYAで式を終えた新郎と新婦は、一度は諦めた結婚式ができて本当に幸せだと言っていました。

それも、川永社長が結婚式を中止にした私たちを結婚式場に招待してくれたお陰だと言っています。

川永社長も永い間、結婚式を見て来ましたが、本当に嬉しい出来事だったと言っています。

川永社長は言います。私達は『おもてなし』業です。裏も表もない『おもてなし』業です。

結婚式を中止したいと言う方のお気持ちを考えると、深刻な事があるに違いないと感じまして、まずご本人様たちの事情をお尋ねし、その事に対して最大限のおもてなしをしようと思ったのです。

私は医者ではありませんので癌を治す事はできません。しかし、スタッフ全員が精一杯の『おもてなし』の心で接する事が、私たちにさせていただける唯一の事です。

スタッフにも感謝をしています。何より、新郎が健康になった事が一番良かった事です。

これからも末永く健康で幸せな生活を過ごせるように、日々おもてなしの心でお祈りをさせていただいています。

関連記事

夕日(フリー写真)

生きることの大切さ

ガンダム芸人の若井おさむさん。 彼は幼い頃から日常的に、兄と母親から相当な虐待を受けていました。 それは彼が20代前半の頃までずっと続きました。 それに耐えかねた若…

カップル

光の中での再会

一昨年の今日、僕は告白をしました。それは、生まれて初めての告白でした。 彼女は、全盲でした。 その事実を知ったのは、彼女がピアノを弾いているのを聴いて、深く感動した直後の…

カップル

余命と永遠の誓い

彼は肺がんで入院し、余命宣告されていました。 本人は退院後の仕事の予定を立て、これからの人生に気力を振り絞っていました。 私と彼は半同棲状態で、彼はバツイチで大分年上だっ…

浜辺で手を繋ぐカップル(フリー写真)

彼女の面影

彼女が痴呆になりました。 以前から物忘れが激しかったが、ある日の夜中に突然、昼ご飯と言って料理を始めた。 更に、私は貴方の妹なのと言ったりするので、これは変だと思い病院へ行…

柴犬

最後まで守った芝犬

昔、私の近所に、亡き夫を偲びながら一人暮らしをしていたお婆ちゃんがいました。彼女の家には一匹の柴犬がいて、その犬はお婆ちゃんの日々の寂しさを癒していたようです。 お婆ちゃんは心…

カップル(フリー写真)

人の大切さ

私は生まれつき体が弱く、よく学校で倒れたりしていました。 おまけに骨も脆く、骨折6回、靭帯2回の、体に関して何も良いところがありません。 中学三年生の女子です。 重…

親子

「おかえり」と言ってくれる人

私は、父が大好きだ。 いつも優しくて、笑顔を絶やさない人。 私がいじめられていたときも、誰よりも真剣に話を聞いてくれて、守ってくれた。 ※ 父の職場は遠くて、…

カップル(フリー写真)

震災で亡くした彼女

俺の彼女は可愛くて、スタイルが良くて、性格も良くて、正に完璧だった。 高校に入る前に一目惚れした。 彼女も俺に一目惚れしたらしく、向こうから告白してくれたので、喜んで付き合…

バイキングのお皿(フリー写真)

埃まみれのパンチパーマ

阪神大震災後の話。 当時、俺はあるファミレスの店員をしていて、震災後はボランティアでバイキングのみのメニューを無料で提供する事になった。 開店と同時に満席になって待ち列が出…

手を握る(フリー写真)

仲直り

金持ちで顔もまあまあ。 何より明るくて突っ込みが上手く、ボケた方が 「俺、笑いの才能あるんじゃね」 と勘違いするほど(笑)。 彼の周りには常に笑いが絶えなかった…