膝枕
昔、飲み会があるといつも膝枕をしてくれる子が居たんだ。
こちらから頼む訳でもなく、何となくしてもらう感じだった。
向こうも嫌がるでもなく、俺を膝枕しながら他の奴らと飲んでいる、という感じ。
別に付き合っている訳でもなかった。単なる会社の同僚。
可愛かったけど。
※
セクハラという言葉が世間に広まり始めた頃、俺も上司から
「宴会であまり破目外すなよ」
とサラッと言われたんだ。
すぐに『あの子、本当は嫌だったんだな…』と少し凹んだ。
上司に相談するほど嫌われていたのかってさ。
※
宴会で膝枕しなくなって暫く経ち、一人で年末に休日出勤していた時、たまたまその子が会社にやって来たんだ。
どうも昨日貰ったカレンダーを忘れていたらしい。
もう良い大人だから、例の事件からも特によそよそしくはならなかったんだけど、やはり二人きりだと気まずい。と言うか会話し辛い。
だから最初にちょっと挨拶しただけ。
それで、その子がカレンダーを取ったからもう帰るのかと思ったら、こっちに来たんだ。
『何か用か?』とは思いつつも、こちらからは話し掛けずにパソコンを見ていたら、
「あのさ」と話し掛けてくる。
「何?」とこちらも普通に返すと、
「最近、膝枕してこないよね?」と言ってきた。
『嫌がってるのはお前だろ』と思いつつも、
「いや、セクハラ話題になってるし(笑)」
と返すと、営業所内の喫煙エリアにあったソファーの方へ行って座り、膝をポンポンと叩く。
「何やってんの?(笑)」と聞いたら、
「おいで」って。
それが今の嫁さん。