再建の約束

公開日: 心温まる話 | 震災に関する話

瓦礫

太陽の光がほんのりと残骸の上を照らしていた。災害により変わり果てた風景の中、一つの臨時の避難所が静かな緊張感を持っていた。

「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります…」

荒廃したこの場所で、青春の輝きを持った一人の青年が立ち上がった。

彼の手には、希望と絆の言葉を伝えるための拡声器が握られていた。

彼の真っ赤に泣き腫らした瞳からは、深い悲しみと希望が滴るような涙が流れていた。

その涙を拭いつつ、彼は声を震わせながらも、力強くメッセージを続けた。

「これから僕らが、この神戸を立て直して行かなければなりません。

背中を押してくれたのは、毎日、毎時、ここで命を懸けて支えてくれた自衛隊の人達です」

彼の言葉に、周囲の大人達も心を打たれ、思わず涙を流す。

彼らの中には、家族や友人を失った者も多い。

しかし、その痛みを乗り越えて、新しい希望を見つけようとする強い意志が、青年の言葉に共鳴していた。

そして、その場にいた多くの人々が、自衛隊・災害派遣部隊の勇敢な人々へ感謝の気持ちを表現するために、一斉に彼らの方へと駆け寄った。

「長い間、ありがとうございました!」

感謝の心を込めて、青年は大声で叫んだ。

そして、彼は一人の自衛官の胸に飛び込み、情熱的な涙を流した。

その自衛官も、彼を力強く抱き締め、二人は互いの温かさを感じながら涙を共有した。

風に舞う『自衛隊さん、ありがとう』の横断幕。

その下で、多くの人々と自衛隊の人々が抱き合い、感謝と希望の涙を流していた。

この日、神戸で繰り広げられた感動のシーンは、自衛隊の大きな任務の完結を告げ、同時に新しい未来への第一歩となった。

関連記事

猫(フリー写真)

会いに来てくれた猫

五年前に飼っていた茶トラ猫。 当時、姉が家出同然で出て行ってしまい、家の雰囲気が暗かったのを憶えています。 そんなこともあり、私は家では出来るだけ明るく振る舞っていましたが…

教室(フリー背景素材)

同級生の思いやり

うちの中学は新興住宅地で殆どが持ち家、お母さんは専業主婦という恵まれた家庭が多かった。 育ちが良いのか、虐めや仲間はずれなどは皆無。 クラスに一人だけ、貧乏を公言する男子が…

通学路(フリー素材)

私を育ててくれた母

私は産まれてすぐ親に離婚され、両親共に引き取ろうとせず、施設に預けられました。 そして三歳の時に、今の親にもらわれたそうです。 当時の私にはその記憶がなく、その親を本当の…

バー

最後のショットバー

20歳の誕生日、姉は私を雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。初めてのバー体験に圧倒されている私を見て、姉は「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみたい」と笑いながら、彼女が…

カップル(フリー写真)

秘密で手話を

待ち合わせた彼女を待っていて見かけたのは、大学生風のカップルだった。 男の子が女の子の正面に立って、何かしきりに手を動かしていた。手話だ。 彼はやっと手話を覚えたこと、覚え…

駅のホーム

旅で得た千円札

学生時代、ほとんどお金を持たずに貧乏旅行に出た私。帰りの寝台列車の切符を買ったら、残金はわずか80円になってしまった。食事をしていないのは丸一日、家に着くまではまだ36時間以上ある。…

散歩する親子(フリー写真)

家族三人で過ごした思い出

私の母親は、私が12歳の時に亡くなりました。 ただの風邪だったのに、入院してから1週間後にはもういなくなってしまったのです。 そして、父親も私が20歳の誕生日の1ヶ月後に…

手を繋ぐ友人同士(フリー写真)

メロンカップの盃

小学6年生の時の事。 親友と一緒に先生の資料整理の手伝いをしていた時、親友が 「あっ」 と小さく叫んだのでそちらを見たら、名簿の私の名前の後ろに『養女』と書いてあった…

信号(フリー写真)

素直な感謝の気持ち

今日、近所の交差点で車に乗り信号待ちをしていると、前方の右折車線でジリジリ前進している車がいた。 明らかに『信号が青になった瞬間に曲がっちまおう』というのが見え見え。 この…

柴犬(フリー写真)

おばあちゃんと柴犬

昔の話だが、近所に旦那さんに先立たれ、独り暮らしをしているお婆ちゃんが居た。 お婆ちゃんは室内で柴犬を飼っていた。 嫁いだ娘さんや孫たちがしょっちゅう様子を見に来ていたから…