父の小さな優しさ

公開日: 家族 | 心温まる話 |

男の子

子供の頃、母が入院していた時期があって、そのせいで遠足の準備がうまくできなかったんだ。一人じゃお菓子も買いに行けなくて、家にあった食べかけのお茶菓子をリュックに詰め込んだのを覚えてる。

その夜、いつも通り遅くに帰ってきた父は、ふと「明日遠足か」とつぶやいて、僕のリュックを覗いたんだ。父は何も言わず、ただ黙って見ていた。僕はそのまま眠りについたけど、翌朝、リュックの中身を見てびっくりしたよ。

昨日のお菓子が、まるで魔法にかけられたように変わっていたんだ。オマケのついたお菓子や小さなチョコレートに変わっていた。僕が寝ている間に、父はコンビニへ行ってくれたんだね。僕は食べかけのお菓子でも全然気にしてなかったけど、父はそんな僕のことを思って、わざわざ買いに行ってくれたんだ。

今思い返すと、あの時の父の心境がよくわかる。母がいない家庭の中で、僕のために何かしてあげたいと思ってくれていたんだろう。小さなことかもしれないけど、父のその行動が、今でも僕の心に深く残っているんだ。

母の不在中、父は家族を支えてくれていた。そして僕には、そんな父の小さな優しさが、今も大きな温もりとなって残っている。あの時の父の優しさに、心から感謝しているよ。

関連記事

窓辺(フリー写真)

病院の窓辺から

ある病院に、頑固一徹で世を拗ねたような患者のお婆さんが居ました。 家族から疎まれていたためでしょうか。看護師さんが優しくしようとしても、なかなか素直に聞いてくれません。 …

ラーメン(フリー写真)

母ちゃんとラーメン

今日、俺は珍しく母ちゃんを外食に誘った。 行き先は、昔からよく行く馴染みのラーメン屋だった。 俺は味噌ラーメンの大盛り、母ちゃんは味噌ラーメンの並盛りを頼んだ。 「昔…

パソコン(フリー写真)

母からのメール

私が中学3年生になって間もなく、母が肺がんであるという診断を受けたことを聞きました。 当時の自分は受験や部活のことで頭が一杯で、生活は大丈夫なのだろうか、お金は大丈夫なのだろう…

妊婦さん(フリー写真)

普通の一家の物語

その昔、大学の同級生の女の子にがりがりに痩せた子が居た。 細身の娘が好みだったので声を掛け、程なく恋仲に。 ある日、 「心臓に大穴が空いていて、苦しい。 子供も…

日記帳

嫁の日記

先日、ふと嫁の日記を盗み読みしてしまった。 何気なく手に取ったその日記に書かれていたのは、嫁が普段、昼ごはんに納豆ご飯やお茶漬けしか食べていないという事実だった。 さらに…

巣鴨の歩行者天国(フリー写真)

とげぬき地蔵様

私は小さい頃から中耳炎で、しょっちゅう耳が痛くなっては、治療のために耳鼻科へ行っていました。 小学校に入ると、私が耳鼻科に行くために学校を休んだり早退したりすると、クラスの子に …

日本料理(フリー写真)

ここ一番の踏ん張りどころ

神戸観光ホテルで修業した時は、往生しましたよ。板長にいじめられたんです。 僕、仲居さんとのチームワークを良くしようと思って、彼女たちに気を遣っていたから、結構可愛がられていたん…

父親の手を握る子(フリー写真)

もし生まれ変わったら

両親が離婚して、若くして妊娠した母親にとっては、望まれた子供ではなかった。 自分が6歳の時に母は別の男性と付き合い、父親も別の女性と関係を持ったため、両親は自分の親権を争う裁判…

朝の空

天使になった少女

私が看護学生だった頃の話です。 ある休日、友達と遊びに行った帰り道で、突然、目の前で交通事故が起こりました。 ひとりの小さな女の子が車に撥ねられ、道路に倒れていたのです。…

桜(フリー写真)

大切な5つの言葉

1. 今、辛い人はそのことで頭がいっぱいになるが、辛さや悩みはいつか必ず終わる。 終わることが分かっていれば、今の辛さも軽くなる。 過ぎてしまえば大したことなかっ…