母ちゃんとラーメン

公開日: 家族 | 心温まる話 |

ラーメン(フリー写真)

今日、俺は珍しく母ちゃんを外食に誘った。

行き先は、昔からよく行く馴染みのラーメン屋だった。

俺は味噌ラーメンの大盛り、母ちゃんは味噌ラーメンの並盛りを頼んだ。

「昔からここ美味しいのよね」

と、柄にもなく顔に皺を寄せて笑っていた。

ラーメンが出来上がると、俺も母ちゃんも夢中で麺をすすっていた。

あまりにも母ちゃんがニコニコしながら食べているものだから、俺もつられて笑っちまったよ。

暫く経って、ラーメンを食い終わった俺は、ふと母ちゃんの方を見たんだ。

ラーメンの器に浮かぶチャーシューが一枚、二枚、三枚…。そのチャーシューを捲ると、麺がまだ沢山余っていた。

母ちゃんは俺の方を申し訳なさそうに見て、

「ごめんね。母ちゃん、もう年だから。ごめんね」

と繰り返していた。

「んなもんしゃーねーべ」

と言うと、俺は母ちゃんの残したラーメンをすすった。

そういやガキの頃、よく無理して大盛りを頼んで、結局食べ切れなくて母ちゃんに食ってもらってたっけ。

いつの間にか立場も逆転。あんなに若かった母ちゃんの顔も今じゃ皺だらけで、背丈も頭一個分違う。

その皺の数ほど、今まで散々迷惑掛けたんだろうなって思うと、悔しさと不甲斐なさで涙が出て来る。

母ちゃん、こんな俺を今まで育ててくれてありがとう。

俺、立派な社会人になるわ。

関連記事

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

結婚式(フリー写真)

二人目の子供

俺が結婚したのは20歳の頃だった。当時、妻は21歳。学生結婚だった。 二年ほど貧乏しながら幸せに暮らしていたのだが、ある時、妊娠が発覚。 俺は飛び上がるくらい嬉しく、一人で…

和室(フリー写真)

お父さん頑張ろうね

俺の会社の友人は、4年前に交通事故で奥さんと当時4歳の長男を亡くした。 飲酒運転の車が歩行中の二人を轢き殺すというショッキングな内容で、ワイドショーなどでも取り上げられたほど凄惨…

婚約指輪(フリー写真)

例外の入籍手続き

彼は肺がんで入院していて、余命宣告されていました。 本人は退院後の仕事の予定も入れ、これからの人生に気力を振り絞っていました。 私と彼は半同棲状態、彼はバツイチ、そして大分…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…

阿佐ヶ谷七夕まつりの短冊(フリー写真)

人のために出来ること

ある家庭に、脳に障害のある男の子が生まれた。 そして数年後、次男が誕生した。 小さい頃、弟は喧嘩の度に 「兄ちゃんなんて、バカじゃないか」 と言った。それを聞い…

バスの車内(フリー写真)

乗客全員の拍手

今から16年程前、12月も半ばを過ぎた頃の話です。 私は体調を壊し、東京にある中野坂上の病院へ週二回、通院していました。 その日は今にも雪が降り出しそうな空で、とても寒い日…

子供たち(フリー写真)

子ども達への無償の愛

『40年かけて35人の道に捨てられた子どもを拾い救って来た女性』 ある一人の女性に隠されたストーリーが、世界中に感動を与えている。 その女性とは、中国の楼小英(ロウ シャオ…

裁縫(フリー写真)

妹に作った妖精衣装

俺には妹が居るんだが、これが何と10歳も年が離れている。 しかも俺が13歳、妹が3歳の時に母親が死んでしまったので、俺が母親代わり(父親は生きているから)みたいなものだった。 …

冬と春の境界(フリー写真)

人間としての愛

1月の朝がとても寒い時に、必ず思い出す少年がいます。 当時、私は狭心症で休職し、九州の実家にて静養していた時でした。 毎朝、愛犬のテツと散歩していた時に、いつも遅刻して実家…