友人の棺
友人が亡くなった。
入院の話は聞いていたが、会えばいつも元気一杯だったので見舞いは控えていた。
棺に眠る友人を見ても、闘病で小さくなった亡骸に実感が湧かなかった。
遺品整理を手伝っていると、いつも遊びに行くとコーヒーを淹れてくれるマグカップがあった。
手に取った途端、『元気になってまた会えると信じていたのに』という気持ちが涙と一緒に溢れて来た。
人目も憚らず声を上げて泣いた。
喪主のお姉さんから、
「お見舞いに来ると無理して何か食べたりして吐いていました。お気遣い有難う御座います」
と泣きながらお礼を言われた。
寂しい思いをさせたかもしれないけど、これで良かったのかもしれない。
そう自分に言い聞かせ、友人の棺を見送った。