友達の大切さ

公開日: 友情 | 悲しい話

公園(フリーイラスト)

幼稚園の頃から仲が良かった親友が居た。

俺たちはいつも4人で遊んでいた。

どんな時も、一緒に遊んでいた。

彼女についての相談をしたり馬鹿言ったり、喧嘩したり。

そんな事をやり合っているうちに、俺たちの絆は更に深まって行った。

ある日、いつものメンバーで遊んでいる時、ゆうき(仮名)の具合が悪そうだった。

そいつは元気だけが取り柄だったのに、その日だけは具合が悪かった。

日が経つ毎にゆうきの具合は悪くなって行った。

俺たちは心配になって体調を聞いたが、

「大丈夫。何てことないよ」

と言っていた。

数日後、ゆうきは学校を休むようになって、病院で入院していることを親に聞いた。

親からゆうきが難病に掛かっている事、そして治らない事、もうすぐ天国に行くかもしれない事。

全部聞いた。俺たちは言葉が出なかった…。

俺たちはいつもより1人少ない、3人で御見舞いに行った。

プレゼントを持って。会って元気づけてやり、また一緒に遊ぶんだと俺は思った。

病室に入ってゆうきを見ると、全身チューブだらけで、ちゃんと顔を見る事が出来なかった。

俺たちが「絶対良くなるよ」と言ったら、

ゆうきに「まだ死にたくない」と言われた。

面会時間が短かったから、プレゼントを渡して病室から出た。

病室から出た後、俺たちの涙は止まらなかった。

まだ死んでいる訳じゃないのに、凄く悔しかった。

何で俺たちの親友がこんなに苦しまなきゃいけないんだと思った。

俺たちは何も出来なくて、ただ涙を流す事しか出来なかった。

そして俺たちは毎日のように御見舞いに行った。

俺は親から貰っている少ないお小遣いを貯め、ゆうきの為にプレゼントを買って病院に行った。

いつもの病室だから迷う事なく真っ直ぐ進み、病室に入るとゆうきの姿は無かった。

部屋の中の状態はいつものままなのに、ゆうきだけが居なかった。

頭の中が真っ白になり、何が起きたのか分からなかった。

部屋の前でプレゼントを持って立っていると、後ろからゆうきの母親が来て俺に言った

「本当についさっき息が止まって…来てくれてありがとう」

と、涙を我慢しながら俺に言った。

プレゼントはゆうきの母親に渡し、俺は病院を出た。

その後、俺たちは3人だけで遊ぶようになった。

俺たちの仲間が居なくなって初めて気が付いた。

友達の大切さを。

今まで本当にありがとう。

絶対忘れないよ。

関連記事

母の手を握る赤ちゃん(フリー写真)

生まれて来てくれて有難う

親と喧嘩をし「出て行け」と言われ、家を飛び出して6年。 家を出て3年後に知り合った女性と同棲し、2年後に子供が出来た。 物凄く嬉しかった。 母性愛があるのと同じように…

アパート

優しい味のおにぎり

もう20年以上前のことです。古びたアパートでの一人暮らしの日々。 安月給ではあったが、なんとか生計を立てていました。隣の部屋には50代のお父さんと、小学2年生の女の子、陽子ちゃ…

公園(フリー写真)

一緒に遊んでくれた女の子

これは私が小学三年生の頃の話です。 両親が離婚して母子家庭となり、一人で居るのが怖かった私は、しょっちゅう児童館へ行っていました。 学童保育という手もあったのですが、当時は…

親子の後ろ姿(フリー写真)

育ての親

私には、お母さんが二人居た。 一人は、私に生きるチャンスを与えてくれた。 もう一人は……。 ※ 私の17歳の誕生日に、母が継母であることを聞かされた。 私を生んで…

教室(フリー写真)

虐め

友達が自殺した。 理由はよくある『虐め』。 俺は気付いていた。 友達が虐められてたことには気付いていた。 でも自分までそうなるのが嫌だったから、最後は他人の振り…

アパート(フリー写真)

おにぎりをくれた女の子

現在から20年以上も前、まだオンボロアパートで一人暮らしをしていた時の事だ。 安月給で金は無かったが、無いは無いなりに何とか食っては行けた。 隣の部屋には50代くらいのお父…

マグカップ(フリー写真)

友人の棺

友人が亡くなった。 入院の話は聞いていたが、会えばいつも元気一杯だったので見舞いは控えていた。 棺に眠る友人を見ても、闘病で小さくなった亡骸に実感が湧かなかった。 …

瓦礫

災害の中での希望と絶望

東日本大震災が発生した。 辺りは想像を絶する光景に変わっていた。鳥居のように積み重なった車、田んぼに浮かぶ漁船。一階部分は瓦礫で隙間なく埋め尽くされ、道路さえまともに走れない状…

月

三度の祈り

それは今から数年前、俺の人生における三度の神頼みの始まりでした。 最初は七歳の時、両親が離婚し、厳しい祖父母の元へ預けられた時のことです。 彼らから「お前のせいで別れた」…

カップルの後ろ姿

届かぬ想い

関係を迫ると、「あなたは紳士じゃない」と言われた。 けれど、関係を迫らなければ、「あなたは男じゃない」と責められた。 何度も君の部屋を訪ねると、「もっと一人の時間が欲しい…