誕生日会と親友
僕が小学4年生の時、10歳の誕生日会を開くことになった。
土曜日に仲の良い友達みんなに声を掛けた。
「明日来てくれる?」
みんなは、
「うん!絶対行くよ!」
と言った。
俺は引っ込み思案で、誕生日会なんて開くのは初めてだったからドキドキしていた。
母さんは張り切ってケーキを買って来た。
プリンアラモードの小さいやつをみんなの分。
※
当日、ドキドキしながら待っていたけど…。
来ない、誰も。
10時、12時、ずっと待って15時近くなった。
「電話してみたら?」
と母さんは言った。
電話したけど誰も出ない。
いや、親とかは出るけど
「出かけた」「用事がある」
などの返事だった。
最後の一人。
「あの、○○君居ますか?」
「ちょっと待っててね」
居た。
「もしもし、今日来れる?」
「ごめん、用事が出来て。今日は行けない。ホントにごめんね」
「そうなんだ。分かった、じゃあね」
「うん、じゃあね」
僕は聞き逃さなかった。
電話の向こうに、誕生日会に誘ったみんなの笑い声が聞こえた。
あー、こいつの家にみんな居るのか。
※
そのうち雨が降り始めた。
雨はどんどん強くなって、土砂降りになった。
もの凄い寂しさに包まれて、一人で泣いていた。
「みんなの分、食べちゃおうか?」
母さんは言った。
「…いい、いらない」
食べる気にはなれなかった。
腹がキューッと締め付けられて、無理だった。
雨は土砂降りで、更に哀しさを煽った。
※
「ピンポーン」
17時くらいかな、家の呼び鈴が鳴った。
「はーい」
俺はグズッていたから母さんが出た。
「みー君来たよ」
俺は赤くなった目をこすりながら玄関に行った。
そこにはずぶ濡れのみー君が立っていた。
「ごめんね。塾があって、こんな時間に来て」
俺はびっくりした。
みー君とは、昔はよく一緒に遊んだけど、クラスが変わってからはあまり遊ばなくなった。
と言うか、呼んでいなかった。誕生日会に。
彼は俺の誕生日を覚えていてくれた。
「はい」
みー君はビニール袋を差し出した。
中古のファミコンのソフト。
今でも覚えている、コナミの『ワイワイワールド』が入っていた。
「じゃあね」
みー君は帰ろうとした。俺は、
「待って」
と言った。
「ケーキ、食べない?」
母さんはみー君の家に電話を掛けていた。
「遅くなってもいいですか? 帰りは、お宅まで送りますので」
俺とみー君はファミコンをして、母さんの料理を食べて、みんなの分のケーキを食べた。
たくさん、たくさん。
ほんの2時間ぐらいだったけど、最高に楽しかった。
みー君、あの時はホントにありがとう。
みー君、元気かな。今頃、何しているだろう。