笑顔のつながり
私の中学時代は、新興住宅地に位置しており、ほとんどの生徒が持ち家に住む裕福な家庭出身でした。お母さんが専業主婦である家庭が多く、いじめや仲間はずれが皆無という幸せな環境でした。
しかし、クラスには一人、家の経済状況を隠さず公言する男子生徒がいました。彼は7人兄弟の長男で、家は子沢山で低収入、給食費の支払いも遅れがちでした。彼の制服は色褪せて緑色がかっており、中学3年生になると急激に身長が伸びたため、制服の袖が短くなり、ボタンも閉められなくなっていました。
ある休み時間、彼がふざけているときに制服の背中の縫い目が裂けてしまいました。しかし、彼はそれをギャグにして笑いを取り、周りも笑っていましたが、家庭科が得意な女子がすぐに針と糸で縫い直してあげました。その場にいたある男子が声を高らかにしました。
「誰か兄ちゃんとか近所の人で、余った綺麗な制服を持ってる人いないかー?」
その呼びかけに、クラスのみんなが家に帰って親や近所に声をかけ、不要になった制服を探しました。
翌日、彼の机の上には2着のジャケットと1着のズボンが置かれていました。その日はクラス対抗のバレーボール大会があり、彼は新しい制服を受け取ってうれしそうに高く掲げながら言いました。
「みんな、ありがとうな!お礼に今日は俺がバンバン点取るから!」
彼は新聞配達で帰宅部でしたが、見事なバレーボールの腕前を披露し、一人で何度も得点を決め、クラスを優勝に導きました。勝利の瞬間、男子たちは彼に駆け寄り、笑いながら抱き合ったり、胴上げをしたりして祝福しました。
それを見ていた女子たちは、彼への感謝の涙を流していました。それは、ただの中学生の日々ではなく、思いやりと連帯感に満ちた、忘れがたい良い時代でした。