幸せな家族
私は長女が3歳になった時に長男を出産した。
長男が生まれるまで、私と長女は殆どずっと一緒に居た。
夫が居ない平日の昼間は、二人だけの時間だった。
でも子供が二人になると、ずっと長女だけという訳にはいかない。
出来るだけ寂しくないように長女を見ているつもりでも、どうしてもそれまでより長女と一緒に遊べなくなっていた。
それでも長女は我儘も言わず、長男の面倒を見たりしてくれていた。
私が長男の面倒を見ている時は、大人しく一人でお絵かきをしていた。
それがとても有り難く助かっていた。
夫は育児に協力的だし、子供たちも良い子に育ってくれていた。
ストレスも無く幸せな日々だったと思う。
それでもきっと疲れが溜まっていたのだろう。
ある日、風邪で寝込んでしまった。
夫は数日有給を取って、子供の面倒を見てくれた。
夫は元々結婚前は一人暮らしだったので、家事全般をこなすことが出来る。
子供の世話もよく手伝ってくれていたので、安心して任せられた。
※
一日目は本当に起き上がれない状態で、殆どずっとうとうとしていた。
熱が下がってきた二日目は、あまり眠れず横になったまま、ずっと生活音を聞いていた。
ドアの向こうから夫や子供の声、遊んでいる音、食事の音などが聞こえていた。
見えなくても三人の様子が目に浮かんだ。
夫が持って来てくれたお粥を食べながら、早く元気にならなくちゃと思った。
子供に染さないようにと、数日子供に会っていないだけで凄く寂しく感じた。
※
一時間ほど経ってから夫が食器を下げに来てくれた。
トレイを片手に持つと、左手に持っていた紙を私に渡して部屋から出て行った。
私は夫から受け取った数枚の白い紙を見つめていた。
画用紙のような真っ白な紙を裏返した。
裏返すと、そこには夫の字でメッセージが書かれていた。
「ママ、早く元気になってね」
紙は三枚あった。
次の紙を裏返すと、そこには落書きのようなものが描かれていた。
きっと長男に色鉛筆を持たせたのだろう。
最後の紙はきっと長女からだ。
そう思って紙を裏返した。
「ママ、だいすき」の言葉と、家族四人の絵が描かれていた。
長女の絵は、一緒にお絵かきをしていた頃よりも凄く上手になっていた。
元気になったら絵を飾るための額を買いに行こう。
そんなことを考え、私は笑顔になった。