幸せな家族

公開日: 子供 | 家族 | 心温まる話

家族の手(フリー写真)

私は長女が3歳になった時に長男を出産した。

長男が生まれるまで、私と長女は殆どずっと一緒に居た。

夫が居ない平日の昼間は、二人だけの時間だった。

でも子供が二人になると、ずっと長女だけという訳にはいかない。

出来るだけ寂しくないように長女を見ているつもりでも、どうしてもそれまでより長女と一緒に遊べなくなっていた。

それでも長女は我儘も言わず、長男の面倒を見たりしてくれていた。

私が長男の面倒を見ている時は、大人しく一人でお絵かきをしていた。

それがとても有り難く助かっていた。

夫は育児に協力的だし、子供たちも良い子に育ってくれていた。

ストレスも無く幸せな日々だったと思う。

それでもきっと疲れが溜まっていたのだろう。

ある日、風邪で寝込んでしまった。

夫は数日有給を取って、子供の面倒を見てくれた。

夫は元々結婚前は一人暮らしだったので、家事全般をこなすことが出来る。

子供の世話もよく手伝ってくれていたので、安心して任せられた。

一日目は本当に起き上がれない状態で、殆どずっとうとうとしていた。

熱が下がってきた二日目は、あまり眠れず横になったまま、ずっと生活音を聞いていた。

ドアの向こうから夫や子供の声、遊んでいる音、食事の音などが聞こえていた。

見えなくても三人の様子が目に浮かんだ。

夫が持って来てくれたお粥を食べながら、早く元気にならなくちゃと思った。

子供に染さないようにと、数日子供に会っていないだけで凄く寂しく感じた。

一時間ほど経ってから夫が食器を下げに来てくれた。

トレイを片手に持つと、左手に持っていた紙を私に渡して部屋から出て行った。

私は夫から受け取った数枚の白い紙を見つめていた。

画用紙のような真っ白な紙を裏返した。

裏返すと、そこには夫の字でメッセージが書かれていた。

「ママ、早く元気になってね」

紙は三枚あった。

次の紙を裏返すと、そこには落書きのようなものが描かれていた。

きっと長男に色鉛筆を持たせたのだろう。

最後の紙はきっと長女からだ。

そう思って紙を裏返した。

「ママ、だいすき」の言葉と、家族四人の絵が描かれていた。

長女の絵は、一緒にお絵かきをしていた頃よりも凄く上手になっていた。

元気になったら絵を飾るための額を買いに行こう。

そんなことを考え、私は笑顔になった。

関連記事

ちゃぶ台(フリー写真)

色褪せた家族写真

一昨年、ばあちゃんが死んだ。 最後に会ったのは、俺が中学生の時だったかな。 葬式の為に20年越しで、ばあちゃんの住んでいた田舎に行った。 次の日、遺品の整理をする為に…

ハート(フリー素材)

残りの一年

彼女に大事な話があるからと呼び出した。 彼女も俺に大事な話があると言われて待ち合わせ。 てっきり別れると言われるのかと思ってビビりながら、いつものツタヤの駐車場に集合。 …

駄菓子屋(フリー写真)

駄菓子屋に集結したヒーロー

近所に古い駄菓子屋がある。 経営しているのは、お婆ちゃん一人だけ(お爺ちゃんは5年程前に病気で亡くなってしまった)。 いつもニコニコしていて、とても優しいお婆ちゃんで、お金…

電車の車内(フリー写真)

みんな同じ

俺の娘は今年、4歳になる。 嫁は娘を生んですぐに家を飛び出したので、子供には母親の記憶は無い。 今まで母親のことはあまり話題にせず避けて来たのだが、この間ちょっと考えさせら…

日記帳(フリー写真)

天国の恩人

私はキャバクラ嬢でした。 家がとても貧乏で、夜に働きながら大学へ行きました。 そんな私の初めてのお客様。 Yさん、70歳のお爺ちゃんです。 彼はとても口下手で、…

スマホを持つ男性(フリー写真)

父からの保護メール

俺は現在高校3年生なんだけど、10月26日に父親が死んだ。 凄く尊敬出来る、素晴らしい父親だった。 だから死んだ時は母親も妹も泣きじゃくっていた。 ※ それから二ヶ月ほ…

サーカス(フリー写真)

ほどこしと親切

私がまだ十代の頃の話です。 サーカスの入場券を買うために、父と私は長い列に並んで順番を待っていました。 私たちの前に居るのは、ようやくあと一家族だけとなりました。 私…

イチゴのショートケーキ(フリー写真)

イチゴショートと女の子

俺がケーキ屋で支払いをしていると、自動ドアが開いて、幼稚園児くらいの女の子が入って来た。 女の子は一人で買い物に来たらしく、極度の緊張からか、頬を赤く染め真剣な眼差しで店員に …

親子の手(フリー写真)

親父の思い出

ある日、おふくろから一本の電話があった。 「お父さんが…死んでたって…」 死んだじゃなくて、死んでた? 親父とおふくろは俺が小さい頃に離婚していて、まともに会話すらし…

倉庫(フリー写真)

おじさんとの約束

数年前の話です。 僕が大学生の頃、日雇いのアルバイトをしていました。 事務所に電話で翌日のアルバイトの予約をして、現場に行って働いていました。 主にやっていた仕事は…