家族で笑った思い出

公開日: ちょっと切ない話 | 家族 |

家族の影(フリー写真)

数年前に、実家の一家の大黒柱である父が倒れた。

脳梗塞で、一命は取り留めたものの麻痺が残ってしまった。

母は親戚(成年後見人)に上手いことを言われて離婚させられた。

財産分与無しで実家を出された。

弟達は当時、専門学生と高校生だった。

父を心配して、病室に何度か一緒に足を運んだ母が、父に言った言葉が忘れられない。

「お父さん、息子たちは私が立派に育てるからね!心配しないでね!」

それを聞いて、言葉を話せない父が涙を流した。

母も泣いていた。

その後、母は狭い公営住宅に住みながら、介護の仕事をして女手一つで弟達を無事に卒業させた。

一番下の弟の高校の卒業式の様子がケーブルテレビで流れていたのだけど、お母さんめっちゃ号泣していた。

私もそれを見て泣いた。

「子育て終わったね!ご苦労様!」

とメールした。

そしたら、

「ありがとう。でもお母さん一人になっちゃうね」

と返って来た。

これからは寂しくないようにしてあげようと思った。

父は現在、施設に居るからいつでも会える。

また家族になりたいのに、成年後見人に滅茶苦茶にされ、もうあの頃に戻れない苦しさ。

どんなに泣いても、時間は帰って来ない。

家族で笑った思い出を夢で見るほどに…。

『何で、あの頃にもっと…』

色々込み上げて来る。

私はこの事があってから、

『人はいつどうなるか分からない』

と思った。

そして、母は強しという言葉は本当なのだなと…。

色々な思いが込み上げて来た。

それまで適当に生きて来た私だけど、資格を取り、真面目に生きようと決めた。

お父さんお母さん、また家族になれますように。

関連記事

手を繋ぎ歩く子供(フリー写真)

身近な人を大切に

3歳ぐらいの時から毎日のように遊んでくれた、一個上のお兄ちゃんが居た。 成績優秀でスポーツ万能。しかも超優しい。 一人っ子の俺にとっては、本当にお兄ちゃんみたいな存在だった…

月明かり(フリー写真)

お月さんの下で

昨日、彼女の家の犬が死んだ。 彼女の家は昔、彼女の兄貴が高校生という若さで自殺してから、両親も彼女もうつ病になって酷い状態だったらしい。 そんな時に引き取って来た犬だったそ…

母の手

あのハンバーグの味

私の母は生まれながらにして両腕に障害を持っていました。 そのため、家庭の料理はほとんど父が担当していたのです。 しかし学校の遠足などで弁当が必要な時は、母が一生懸命に作っ…

妊婦さんのお腹(フリー写真)

母子手帳

今年の6月に母が亡くなった。火事だった。 同居していた父親は外出していて、弟は無事に逃げる事が出来たのだけど、母親は煙に巻かれて既に駄目だった。 自分は違う地方に住んでいた…

ハンバーグ(フリー写真)

お母さんの弁当

俺の母さんは、生まれつき両腕が不自由だった。 なので料理は基本的に父が作っていた。 でも遠足などで弁当が必要な時は、母さんが頑張って作ってくれていた。 ※ 小学六年生の…

男の子

父の小さな優しさ

子供の頃、母が入院していた時期があって、そのせいで遠足の準備がうまくできなかったんだ。一人じゃお菓子も買いに行けなくて、家にあった食べかけのお茶菓子をリュックに詰め込んだのを覚えてる…

手を繋ぐカップル(フリー素材)

可愛い彼女がいた

俺には可愛い彼女がいた。 性格は素直でスタイルも良かったが、周囲からは 「え、あの女と付き合ってるの? お幸せに(笑)」 と、よく馬鹿にされた。 彼女は頭が非常…

母の手を握る赤子(フリー写真)

母の想い

彼は幼い頃に母親を亡くし、父親と祖母と暮らしていました。 17歳の時、急性骨髄性白血病にかかってしまい、本人すら死を覚悟していましたが、骨髄移植のドナーが運良く見つかり死の淵から…

春の路地(フリー写真)

命よりも大切な友達

お前は俺にとって、命よりも大切な友達だ。 小学校2年の時、友達も居なかった俺の誕生日に、プレゼントとしてチョロQを持って来てくれた。 その時の600円というのは、俺達にとっ…

手を繋ぐ恋人(フリー写真)

握り返してくれた手

今から6年前の話です。 僕がまだ十代で、携帯電話も普及しておらずポケベル全盛期の時代の事です。 僕はその頃、高校を出て働いていたのですが、二つ年上の女性と付き合っていました…