改札の猫は降りる人の足元を見る
駅の改札の猫は、降りてくる人の顔を見ない。見るのは足元だけだった。毎週木曜の夜、猫が立ち上がる足音の主を、窓口の小窓から足元しか見えない俺は三か月、知らなかった…
猫はいつも、そっとそこにいてくれます。気まぐれのようで、実はちゃんと見ていてくれる存在——猫にまつわる泣ける話は、独特の静けさと温かさを持っています。
駅の改札の猫は、降りてくる人の顔を見ない。見るのは足元だけだった。毎週木曜の夜、猫が立ち上がる足音の主を、窓口の小窓から足元しか見えない俺は三か月、知らなかった…
犬の散歩の記録が届き続け、猫の銀の鈴が鳴り、九官鳥がおかえりと繰り返す。ペットの泣ける話を11本選び、犬・猫・鳥と山羊の順に案内します。別れのあとも寄り添う小さ…
毎週土曜の午後、絵本の棚の前に立つ老人の膝にだけ、店の猫は迷わず乗った。古書店の猫の席に挟まれた四つ折りの紙を、私は長いあいだ見落としていた。老人は一度も猫の名…
トメはいつも階段の四段目にいた。三段目でも五段目でもなく、その段だけが家でいちばんくたびれている。12年ぶりに実家へ戻った俺は、母が直すなと言い張るその板を、入…
猫と家族の泣ける話。昭和四十七年、雪深い町の活版印刷所で、文選工の伯母は私が拾った子猫の名を十年間ただの一度も呼ばなかった。情のない人だと思っていた。前掛けに入…
妻の一周忌の朝、備前の老陶芸家は窯の余熱の前で、冷え切った子猫を見つけた。窯の前の命を工房へ連れ込み、亡き妻が毎朝使っていた浅鉢で水を飲ませたのが始まりだった。…
亡くなった兄の研究ノートが、五年経って横浜のパン屋に届いた。最後のページに記されていたのは、妹への静かな祈り。猫の首輪で揺れる、兄が遺した銀の鈴の音が、無口だっ…
七年ぶりに帰省した俺を待っていたのは、何も食べなくなった老いた三毛猫と、祖母の縫い物かごに詰まった三十一個のお手玉だった。愛媛の坂の途中の洋裁店で、猫が逝った夜…
老猫のために縫い続けたソックス。嫌がって脱ぐ猫を見ながら、義肢装具士の佳奈は三枚目を縫い上げた朝、縫い物かごの中で彼女を見つけた。…
定年になったら一緒にいてやる。そう思い続けた十五年間、猫のチビはずっと玄関で帰りを待っていた。でも、私が戻ったとき、チビはもうそこにいなかった。…
実家の猫は、赤ん坊の頃に空き地で見つけられた。 その小さな体は目も潰れて放置され、声を限りに泣き叫んでいた。 あまりに悲惨な姿に、最初は正直、触ることすら躊躇っ…
高校生の冬、私の電気毛布の上で産まれた猫のゆめ。出産予定日の十日前に入院したあの日、玄関で待つ猫だったゆめが最後に見せた姿を、娘が二歳になった今、ようやく書き残…
家には、十年ものあいだ一緒に暮らしていた猫がいた。 名前は「ミル」。白地に淡い灰色の柄が入った、シャム猫とどこかの雑種のような子だった。 その出会いは、広場の隅…
物心ついた頃から、ずっと一緒にいた猫が病気になった。 毎日名前を呼ぶと、必ず腕の中に飛び込んできていたあの子が、もう元気に動くことすらできなくなっていた。 獣医…
五年前に、我が家には一匹の茶トラ猫がいました。 当時、姉が家出同然に家を飛び出し、家の中の空気はひどく重く、どこか寂しげなものでした。 私はというと、そんな雰囲…