万華鏡と最後の一枚
昭和四十四年、雪深い湯の町の写真館。療養に来た娘・佐紀さんに頼まれ、僕は毎日一枚だけ町を撮った。裏を見ないでとわたした写真の、その裏に綴られていた言葉――万華鏡…
じっくり読みたい方のために、長編の泣ける話を集めました。短編では描ききれない人物の背景、感情の重なり、時間の経過——読了後に深い余韻が残る、長編の感動する話をお届けします。
昭和四十四年、雪深い湯の町の写真館。療養に来た娘・佐紀さんに頼まれ、僕は毎日一枚だけ町を撮った。裏を見ないでとわたした写真の、その裏に綴られていた言葉――万華鏡…
昭和三十一年、離島の灯台守だった俺は、時化の海から耳の聞こえない娘・汐里を救い上げた。帳面と手話で言葉を交わすうち、島じゅうが手話を覚えていく。声にできない想い…
昭和四十四年の豪雪の峠。乗合バスが横転し、七歳の姪は座席の下に閉じ込められた。半狂乱の私を救い出したのは、黄色い合羽の若い除雪作業員だった。背中を裂かれながら笑…
昭和の岬に立つ灯台守の爺が、亡き娘の忘れ形見の孫を、しょっぱい味噌汁と誕生日ごとに彫った木彫りの小舟で、四十年かけて育て上げた。孫を初めての長い航海へ送り出す朝…
弟から掛かってきた、生まれて初めての電話。昭和三十年代の雪深い炭鉱町を舞台に、詫びてばかりの弟と約束を破った姉の最後の冬を描く泣ける話。弟の行李の底に眠っていた…
昭和の城下町の貸衣装店を舞台にした泣ける話。先に逝った父の黒紋付を、息子の祝言のために仕立て直してほしい——そう持ち込まれた一枚の紋付の裏地から、二十年眠ってい…
昭和の港町を舞台にした泣ける話。風鈴職人の私のもとへ、海から戻らぬ父のために、泣いてばかりの母を笑わせたいという男の子が訪れた。豆粒ほどの小さな風鈴に託した祈り…
昭和の城下町で時計店を継いだ男と、北の港町へ移っていった人。季節の押し花を挟んだ文通は七年目の春に途絶え、誤解を抱えたまま二十数年が流れた。出されることのなかっ…
機械が牧場にやってきた昭和の冬、私は世話をしてきた三頭の馬を手放すことになった。最後の朝、ハナはそっと私の肩に額を押しあてた。北の開拓村で交わした別れと、今も引…
昭和の終わり、北関東の城下町で三代続いた床屋を継いだ続かない俺。大叔父である先代から受け継いだ親方の革砥と、三十年分の常連カルテだけを頼りに刃を握る。嵐の朝、シ…
平成元年の秋、十八で家業の大工を継いだ私が拾った仔犬シゲは、父の道具袋の上で十七年を静かに眠り続けた。私の出産入院中に旅立った愛犬の傍らで見つけた、不器用な父が…
夜勤タクシー運転手として三十年。退職の日、妻が描いた古い地図を見つけた。赤い丸は二人で行った場所、青い丸はいつか行きたい場所。青い丸は一つも叶っていなかった。…
私には、気が強くて、しっかり者のおばあちゃんがいた。 思春期に身長がぐんぐん伸びて、それを気にしていた私に向かって、 「あんた、でかいわねぇ」 と、悪びれもせず…
俺が中学2年生の時、田んぼ道に捨てられていた子犬を拾った。 名前はシバ。 雑種だったけど柴犬そっくりで、親父がシバと名付けた。 シバが子犬の頃、学校から帰って来…
俺の親友テツヤは小さい頃からの大親友。良いことも悪いことも一緒に経験した親友。 中学の時、ケーキ屋を経営しているテツヤのオヤジが脳梗塞で倒れた。 幸い一命を取り…