俺を育ててくれた兄貴
血の繋がらない兄が、身寄りを失った中学生の私を引き取り、大学まで出してくれました。新潟三条の研屋で、兄が十年間だけ研がずにいた母の菜切り包丁。そこには、あと一度…
兄弟姉妹という関係は、不思議なものです。一番近くにいるのに、一番言えないことがある。妹のこと、弟のこと、兄のこと、姉のこと——兄弟姉妹にまつわる泣ける話は、身近すぎて見えていなかった絆を気づかせてくれます。
血の繋がらない兄が、身寄りを失った中学生の私を引き取り、大学まで出してくれました。新潟三条の研屋で、兄が十年間だけ研がずにいた母の菜切り包丁。そこには、あと一度…
両親が消えた冬、十一歳の兄は六歳の弟をたった独りで守り抜いた。万引きで捕まり引き離されて四十年、閉店間際の市場を訪ねた弟は、乾物屋の老婆から兄の秘密を聞かされる…
山形の将棋駒工房で、脳に障害のある兄は三十年ただ歩だけを彫り続けました。父の帳面に残された一行の日付と、裏の字だけが深く彫られた三千枚の駒。守っているつもりで、…
十勝の除雪車に乗る私は、兄の長靴がなぜ右足だけすり減るのか知らずにいました。封も切られぬままロッカーの底に眠っていた合格通知、柱に一本もない兄の背比べの線、二十…
盆地の桃農園で暮らす、血の繋がらない兄と私。無口な兄が黙って払ってくれた入学金、姪のために限界まで差し出した輸血。そして姪の結婚式で読まれた一通の手紙が、継いだ…
仏壇の隅にある一回り小さい位牌。生まれる前に亡くなった兄のものだと聞かされ、俺はその存在をうっとうしいと思っていた。母と怒鳴り合った雨の日、頭の中に響いた舌足ら…
養護施設で育った兄弟。中学を出て和菓子職人になった兄は、弟の学費のため前借りまでして仕送りを続け、自分では菓子を口にしませんでした。就職を機に誘った蔵王の温泉宿…
夏祭りの金魚すくいの屋台に、貧しい身なりの幼い兄妹がやって来ました。汗で温かい三枚の硬貨と、妹に自分の紙をそっと譲り、人混みへ駆け去っていく兄の背中。八年後の思…
いつも私をからかってばかりの、意地悪な兄。けれど中学で虐めに遭い、暗い川を見つめた夜、兄がくれた小さなオルゴールが、すべてを変えました。亡き母の子守唄でつながる…
妻を亡くした港町の調律師に残されたのは、八歳の娘と三歳の息子でした。幼稚園の運動会『おやこでダンス』、入場門に駆け出した小さな影――藍色の割烹着と子守歌が紡ぐ、…