虐めから守ってくれた兄

公開日: 兄弟姉妹 | 心温まる話

教室(フリー写真)

中学生の頃、学校で虐めに遭っていた。

教室に入る勇気が無く、いつも保険室に通っていた。

虐めの事は家族にも言っていない。

ただ私の我儘で保険室に通っているだけ。そんな風に教師や両親は思っていた。

虐めは段々とエスカレートし、また陰湿だった…。

でも周りに心配を掛けたくなくて、いつも無理して笑っていた。

辛くて孤独でどうしようもなくて、死んでしまおうと決心した日の事…。

高校生の兄が修学旅行から帰って来て、私にお土産をくれた。

どこかのドライブインに売っているような、キーホルダーのオルゴール。長崎に行って来たはずなのに…。

幼い頃からいつも兄と一緒に居たが、兄にはいつもイジメられた記憶しかない。

だから長崎のお土産を私にだけくれないのだろう…。

そう思うと何だか学校での虐めと重なり、私はそのお土産を

「こんなのいらない!!」

と投げつけてしまった…。

すると、その衝撃でオルゴールが鳴った。

曲名は知らないけど、

『涙など見せない強気なアナタをこんなに悲しませてるのは誰なの?』

という歌詞の曲が…。

兄は何も言わずにそのお土産を拾おうとしゃがんだ。兄は泣いていた。

初めて兄が泣いているのを見て呆然としていると、兄がポソリと言った。

「お前をイジメて良いのは、兄貴の俺だけだ。

それ以外のヤツがお前を虐めるのは許せない。

俺は知ってるから。お前が家で我慢して笑ってる事。

小さい頃からいつも俺の前で泣いてたんだから、我慢なんかしなくて良いんだぞ。

俺はお前をイジメてばかりの兄貴だけど、他人に妹を虐められて黙っていられる兄貴じゃないからな」

その言葉を聞いて、私は号泣。

学校の虐めの事を全て吐き出しました。

泣き過ぎて喘息で咳き込みながら、全部…。

兄は横に座って聞いてくれていました。

全部話し終わると、

「よく頑張った」

と言って頭をポンポンと撫で、

「今日は寝ろ。明日は学校に行かなくて良い」

と言って部屋から出て行きました。

それから少し経つと、一階で母親と兄が会話している声が聞こえてきました。

翌日から暫く学校を休み、再び登校すると、虐めは無くなっていました。

教師に聞くと、兄が中学校の教員室にブチ切れながら乗り込み、虐めの事を伝えたようでした。

高校の生徒会長が乗り込んで来たため、教師も慌てて虐めに対して動き始めました。

その結果、私を含め多人数が虐めの被害に遭っていた事も判明しました。

その何年か後、私は現在の旦那と知り合いました。

結婚式を挙げた時、兄貴は

「小さい頃から、俺は妹をイジメて泣かして来た。

でも、妹を虐めるヤツは俺は許さない。

どうかこれからは、俺の代わりに守ってやってくれ」

と旦那に告げました…。

兄ちゃん、今日は兄ちゃんの結婚式だよ。

お返しに今日は私が兄ちゃんを泣かすから。

関連記事

カップル

傷跡を越えて

私は生まれながらに足に大きな痣があり、それが自分自身でもとても嫌いでした。その上、小学生の時に不注意で熱湯をひっくり返し、両足に深刻な火傷を負いました。痕は治療を重ねましたが、完全に…

交差点(フリー写真)

家族の支え

中学時代、幼馴染の親友が目の前で事故死した。 あまりに急で、現実を受け容れられなかった俺は少し精神を病んでしまった。 体中を血が出ても止めずに掻きむしったり、拒食症になった…

花(フリー写真)

母心

ちょっとした事で母とケンカした。 3月に高校を卒業し、4月から晴れて専門学生となる私は、一人暮らしになる不安からか、ここ最近ずっとピリピリしていた。 「そんなんで本当に一人…

手を繋ぐカップル(フリー写真)

人に優しくあるためには

私は事故に遭い、足が不自由になってしまいました。 車椅子なしでは外出も出来ませんし、トイレも昔のようにスムーズに行うことが出来ません。 そんな私から友人たちも離れて行きまし…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…

バイク

想い出の贈り物

昔のこと、15歳のときに親のスーパーカブを持ち出した私は、その後の一件を境に、バイクの虜となった。 次々と乗り換えていったバイクたち。そして、幸せな家族との日常。 しかし…

コスモス

愛と犠牲

数年前、私が中学2年生のときに、私たち兄弟の両親は交通事故で亡くなりました。私たちは三兄弟で、私は真ん中の子、4歳上の兄と5歳下の妹がいます。 事故後、私は母方の親戚に、妹は父…

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

ベトナムの夕日(フリー写真)

あの子は僕の友達なんです

ベトナムの村にある宣教師たちの運営する孤児院が、爆撃を受けてしまいました。 宣教師達と二人の子供達が即死し、その他の者も重傷を負いました。 重傷になった者達の中でも、8才の…

ウェディングドレス姿の女性(フリー写真)

可愛い一人娘

この前、一人娘が嫁に行った。 目に入れても痛くないと断言できる一人娘が嫁に行った。 結婚式で「お父さん、今までありがとう。大好きです」と言われた。 相手側の親も居た…