最強最高の兄ちゃん
両親は俺が中学2年生の時、交通事故で死んだ。
俺には4つ上の兄と、5つ下の妹が居る。
両親の死後、俺は母方の親戚に、妹は父方に引き取られて、兄は母方の祖父母と住んでいた。
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それから一年くらい経って、久しぶりに兄から電話があった。
高校を卒業して就職先が見つかったから、兄弟3人で暮らさないかと言われた。
俺はびっくりした。兄は俺とは違い、昔から頭が良く、当然一流の大学に行くのだろうと思っていたからだ。
俺は兄に「大学はいいのか?」と聞いたが、兄は「全滅やったから(笑)。そこは触れんといて」と言っていた。
俺は中学3年生だし、妹はまだ小学3年生だったため、親戚は当然反対していた。
しかし俺も妹も、本当はまた兄弟一緒に暮らしたいと思っていたから、必死に頼み込んで許してもらった。
そして、晴れて兄弟3人一緒に住めるようになった。
※
それからというもの、兄は俺らのために働きまくった。
俺らが貧乏なんて感じることがないようにと、ずっとみんなで一緒に暮らすんだと、昼と夜も別々の仕事をして稼ぎまくって、俺らに小遣いまでくれていた。
そんな兄が先月、交通事故で逝ってしまった…。
※
葬式で俺も妹も泣きじゃくった。
葬式も一通り片付いてみんなが帰った後、別室に居た俺と妹の所に、叔母が夕飯を持って来てくれた。
その際、俺らは兄について衝撃の事実を知ることになった。
両親の死後、兄が親戚中に土下座し、俺と妹のことをよろしく頼むと言って回っていたこと。
兄がバイト代を毎月送り、俺と妹の小遣いにしてやってくれと頼んでいたこと。
京大を蹴って、俺らと一緒に住むために就職したこと。
それを聞いた途端、もう訳が解らないくらい泣いた。
立てんかった…。
色んな兄ちゃんとの思い出が駆け巡った。
小さい頃、俺の手を繋いで、いっつも遊んでくれた…。強くておもろくて優しかった…。自分の小遣いからお菓子を買ってくれてた…。
俺が高校に行かんって言ったらぶち切れて、殴ってでも行かせるって言った…。
いつもボロボロで疲れてても、俺らに八つ当たりなんてしなかった…。
自分の夢を捨てて、俺らのために必死やった…。
おとん、おかんが死んだ時、泣きじゃくる俺と妹を抱いて、頑張れと言って俺らの前では涙一つ見せんかった…。
俺、ホントは兄ちゃんが夜中、泣き声を押し殺して泣いてたの知ってたよ…。
やべえ、思い出して…もうこれ以上、書けねえわ。何も出来んかったわ…。ホントなんも…。
最後に言わせて。最強最高の兄ちゃん!!!
あんたに負けんこと俺がんばるけん!
妹のことも心配せんでいいけんね。
ありがとう。ありがとう!!!