俺の夢
僕達兄弟には元々親が居らず、養護施設で育ちました。
3つ上の兄は、中学を出るとすぐに鳶の住み込みで見習いになり、その給料は全て貯金していました。
そのお金で僕は私立の高校を出て、そして大学にも行けました。
やがて小さな会社ですが就職も決まり、兄への感謝を込めて温泉旅行に連れて行きました。
ビールで上機嫌の兄に、
「あんちゃん、ありがとう。あんちゃんも遊びたかっただろう?」
と言うと、
「お前、憶えてねえんか?
『あんちゃん、俺、しあわせになりてえ』って、小6の時に言ったろ?
それで決めたんだ。
なーんも辛くなかったけど、お前を『しあわせ』にしてやるのが俺の夢だったかんな」
自分ではそんなことを言ったなんて憶えていません。
思春期には金髪で人相も悪く、マナーの悪い兄を恥ずかしく思い、そんな兄に学校へ行かせてもらうことへの憤りすら感じていました。
その晩は、23歳と26歳の兄弟が布団で抱き合って眠りました。
8年前のことですが、ネタじゃないんですよ。
本当の話です。