大切なあなたに花束を

公開日: 仕事 | 心温まる話

花束(フリー写真)

私は介護施設で働いています。

時々おじいちゃんやおばあちゃん宛に、ご家族の方よりお手紙や花束が届きます。

花束を持って行くと、皆さん集まって来ます。

自分かもしれない…と。

メッセージカードが読まれて、花束が誰宛か判明し、その人だけが喜ぶ。

後の人は、がっかりして部屋に戻ります。

ある時、大きな花束が届きました。

いつものように、おじいちゃんおばあちゃん達が集まって来ます。

今度は誰宛だろう?

早くメッセージカードを読むように急かされました。

私はそれを読みました。

カードには、

『大切なあなたにこの花束を贈ります』

と書いてありました。

期待する皆さんの輝く顔。

そして最後の宛名を見て、涙が込み上げてきました。

それは、ここにいるおじいちゃん、おばあちゃん達全員からの私への花束だった…。

『○○さんへ

大切なあなたにこの花束を贈ります。

いつもありがとう。

あなたの笑顔で寂しさを忘れました』

関連記事

赤い糸(フリー写真)

同級生との再会

私はその日、両親、妹と住宅展示場に来ていました。 家を新築する予定となり、両親はここのところ住宅展示場巡りをしていました。 私はなかなか予定が合わず、住宅展示場に来るのはこ…

サイコロ(フリー写真)

あがり

俺は小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。 当初は見知らぬ土地に来てまだ間も無いため、当然友達も居ない。 いつしか俺はノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中…

教室

先生の目に浮かぶ涙

私がその先生に出会ったのは、中学一年生の時。 明るくて元気いっぱいの先生だったけれど、怒るときはすごい勢いで怒る。 そんなパワフルな先生が、私はとても好きだった。 …

青い花(フリー写真)

良い香りに包まれる

小さい頃から、寂しかったり悲しかったり困ったりすると、何だか良い香りに包まれるような気がしていた。 場所や季節が違っても、大勢の中に居る時も一人きりで居る時もいつも同じ香りだから…

学校(フリー写真)

学生時代の思い出

俺が中学生の時の話。 当時はとにかく運動部の奴がモテた。 中でも成績が優秀な奴が集まっていたのがバスケ部だった。 気が弱くて肥満体の俺は、クラス替え当日から、バスケ部…

窓辺(フリー写真)

病院の窓辺から

ある病院に、頑固一徹で世を拗ねたような患者のお婆さんが居ました。 家族から疎まれていたためでしょうか。看護師さんが優しくしようとしても、なかなか素直に聞いてくれません。 …

美しい人生(フリー写真)

お帰りなさい

マニュエル・ガルシアは元気で頼もしく、近所でも働き者と評判の父親だった。 妻に、子供に、仕事に、将来、全て計画通りに運んでいた。 ある日、マニュエル・ガルシアは腹の痛みを訴…

小学生の女の子(フリー写真)

覚えたてのひらがな

ある日、妻が長女をこっぴどく叱っていた。 私「キョーコが何かしたのか?」 妻「私の車を釘みたいなもんでひっかいとるとよ!」 私「何でそんなことしたん?」 と聞…

女の子

父と娘、静かな再会

ファミレスで、一人で食事をしていたときだった。 ふと、前のテーブルから聞こえてきた会話に耳がとまった。 そこにいたのは、スーツ姿の中年男性と、制服を着た女子高生。 …

犬

少年とテツ

1月の寒い朝、思い出す少年がいます。 当時、私は狭心症で休職し、九州の実家で静養していました。 毎朝、愛犬テツとの散歩中、いつも遅刻ギリギリの不良少年に出会いました。 …