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白い絵の具を使わない人

あなたは雪を描くとき、白い絵の具を使わない人でした。夏の病室で「ゆきがみたい」と言われ、僕は真夏の富士山へ登りました。間に合わなかったあの夏と、枕元に置いていっ…

九回ほどいた藍色の帽子

岡山・児島の縫製工場で裁断をしていた二十六歳の従兄弟と、毎日六時半に病室へ通った検品係の千夏さん。手編みの藍色の帽子は、ひと月ごとに新しくなりました。十五年後、…

彼女の遺言

海の見える坂の町の活版印刷所で、わたしと志乃と省吾は出会いました。志乃が昏睡に落ちる前の晩、一人きりで組んでいたのは、自分自身の言葉でした。彼女が遺した最後の版…

最後の時を過ごす二人

白血病で余命わずかとなった二十七歳の船大工と、毎日欠かさず病室へ通い続けた恋人。港町の病室で最後の時を過ごす二人の姿を、当時十六歳だった私はそっと見つめていまし…