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兄が遺した鉛の活字

昭和の終わり、東京で学ぶ私は、活版印刷の植字工だった兄をどこか恥じていた。兄弟の絆の意味も知らぬまま。やがて兄は、見えなくなった目で指の記憶だけを頼りに私の名前…

麦笛が鳴ったら

弟との約束は、いつか私が迎えに行くこと。戦時中、出征する弟に一本の麦笛を持たせた姉。けれど遺された手帳に綴られた、たった一行で、私はようやく気づく。暗がりが怖い…

兄の魚拓帳

十一年口をきかなかった兄の漁師小屋で、弟が見つけたのは三十年分の魚拓帳だった。空白のページに繰り返される『静夫、来ず』──たった四文字に込められた、不器用な兄の…

兄ちゃんの鋏の音

「兄ちゃんは手でしゃべる人」——三十年前に亡くなった弟が遺した古い動画で、ずっと謝れなかった理容師の兄が知る本当の気持ち。不器用な兄弟の沈黙の理解が、姪の結婚式…

ランドセルの色

十一年ぶりに兄と再会したのは、娘のランドセルを選ぶ店だった。ずっと言えなかった「ありがとう」が、冬の光の中でゆっくりとほどけていく。…

弟は黙って研いでいた

十五年前に家を出た弟が、雪の日に蕎麦屋を訪ねてきた。手にしていたのは父の形見の砥石。蕎麦職人の兄が弟の打つ蕎麦を食べたとき、父が最後に伝えたかったことを知る。…

雪の日の兄の手帳

北海道の漁村で写真家として生きた兄が、病気を隠しながら手帳に書き続けていたこと。遺品を整理する中で見つけた手帳と、最後に残された手紙——静かに心に染み入る感動の…

兄の手帳と声

下町の工務店で逝った兄の遺品から見つかった手帳の走り書き。古いスマートフォンに残された27件のボイスメモに、介護士の妹に伝えられなかった言葉が静かに残されていた…

自衛隊の誇り

公民館の集いで浴びせられた問いに、自衛官の弟は六秒黙ってから短く答えました。熊本・八代のい草農家を舞台に、弟が中学の技術の時間に三度も作り直した振るい板の目盛り…

カーブ!

母子家庭に育った私に野球を教えてくれたのは、四つ上の兄でした。投げる前に必ずカーブと一声かけていた本当の理由を、通夜の晩に初めて知ります。天童の駒師になった兄が…

半年前の俺へ

セメントの町で三交替に就いた兄は、夜勤明けの朝、必ず弟の運動靴を爪先だけ外へ向けて直してから上がりました。その小さな癖の本当の意味と、閉めた覚えのない扉。半年前…