少年との約束
俺が入院していた時、隣の小児科病棟に5歳くらいの白血病の男の子が入院していた。
生まれてから一度も外に出られていない子だと聞いた。
※
ある日、大声で泣く声がするので病室を覗いてみると、点滴の注射が嫌だと泣いていた。
看護婦さんが、
「我慢してね。お注射して、早く元気になりましょうね。そしておねえちゃんとお外で遊びましょう」
と諭すと、べそをかきながらも、
「うん、分かった。約束だよ!」
と言って、必死に痛さに堪えていた。
ふと病室を出て来た看護婦さんを見ると、目にはいっぱい涙が溢れていて、ナースステションの前でしゃがんで泣いていた。
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それから一週間後…。
その子は亡くなった。
とても安らかに、眠るように亡くなったと聞いた。
※
誰も居なくなった病室で、あの看護婦さんがあの子が寝ていたベッドの整理をしていた。
「ごめんね…約束守れなくてごめんね…」
と呟きながら、自分の涙で濡れたシーツを抱き締めていた。
自分の死を知らずに、看護婦さんと外で遊ぶことを楽しみにして、痛さに堪えていた男の子…。
死が間近であること知りつつ、必死に笑顔で励ましていた看護婦さん…。
病室に戻った俺も、涙が止め処なく流れた。