最後まで守った芝犬

公開日: ペット | 心温まる話 |

柴犬

昔、私の近所に、亡き夫を偲びながら一人暮らしをしていたお婆ちゃんがいました。彼女の家には一匹の柴犬がいて、その犬はお婆ちゃんの日々の寂しさを癒していたようです。

お婆ちゃんは心臓を患っており、親族も彼女の健康を心配していました。そんなある日、彼女の柴犬が異常行動を起こしました。窓ガラスに体当たりして血を流しながら、吠えながら近所を走り回ったのです。

近所の人々は柴犬の行動に驚き、何か異変があったのではないかとお婆ちゃんの家へ駆けつけました。すると、お婆ちゃんは台所で心臓発作を起こして苦しんでいました。

直ちに救急車が呼ばれ、お婆ちゃんは病院で手術を受けました。その後、無事退院し、数年は平穏な日々を送りました。

ある日、お婆ちゃんの家の雨戸が開かないことを心配した隣家のおばさんがお婆ちゃんの娘さんに連絡を取りました。娘さんが駆けつけたところ、お婆ちゃんは寝床で静かに息を引き取っていました。彼女の死に顔は安らかで、苦しんだ形跡はありませんでした。

枕元では、柴犬がお婆ちゃんに顔を寄せ、すでに冷たくなっていたのです。愛犬もまた、主人とともにこの世を去ったのでした。その柴犬は、まだ健康で元気があったにもかかわらず、まるでお婆ちゃんに付き合うかのように静かに息を引き取っていました。

この話を聞く度に、動物もまた、人間のように最期の時を選ぶことができるのだろうかと考えさせられます。お婆ちゃんを最後まで守った柴犬の姿は、私たちに深い感動と共に多くの謎を残しました。

関連記事

桜

再会と再出発

3年前、私は桜が開花し始める頃に自殺を考えていました。失恋、借金、会社の倒産と様々な問題が重なり、絶望していたのです。両親とも絶縁状態で、孤独を感じていました。 最後に何か美味…

巣鴨の歩行者天国(フリー写真)

とげぬき地蔵様

私は小さい頃から中耳炎で、しょっちゅう耳が痛くなっては、治療のために耳鼻科へ行っていました。 小学校に入ると、私が耳鼻科に行くために学校を休んだり早退したりすると、クラスの子に …

虹(フリー写真)

人生

1960年に私は生まれて、今まで生きてきた。 いたずらっ子だった小学生時代。 落ちこぼれだった中学生時代。 レスリングに出会い、スポーツが何たるかを学んだ高校時代。 …

虹(フリー写真)

自分らしく生きる言葉

嫌いな人を憎むより、大好きな人を愛したい。 悪い噂話をするより、嬉しいことや楽しいことを話したい。 そのような時間を多くして生きたい。 大切な時間を大切に。大切な人…

野球ボール(フリー写真)

頑張ったよ

常葉大菊川(静岡)と14日に対戦し、敗れた日南学園(宮崎)。 左翼手の奥野竜也君(3年)は、がんで闘病中の母への思いを胸に、甲子園に立った。 竜也君が中学1年生の秋、ゆか…

バイオリン(フリー写真)

世界一の良い娘

昨夜、嫁とケンカした。 切っ掛けは些細なことで、小学2年生の娘がバイオリンを習いたいと言い出したことだ。 嫁「本人がやりたいなんて言い出すのは珍しいから、習わせてあげたい」…

キャンドル

灯り続ける希望の光

24歳の時、僕は会社を退職し、独立を決意しました。上司の姿から自分の未来を映し出し、恐れを感じたからです。しかし現実は甘くなく、厳しい毎日が始まりました。25歳で月収7万円、食事は白…

女の子の後ろ姿(フリー写真)

温かい家庭

兄家族が俺達の家にやって来て、長女を押し付け引っ越して行った。 兄も兄嫁も甥っ子だけが生き甲斐みたいなところがあったんだよね。 甥っ子は本当に頭が良かったんだ。 勉強…

菜の花畑(フリー写真)

本当の豊かさ

中国のとある大富豪の男性が、自分の息子を田舎の土地に送りました。 裕福な生活を当たり前と思っている息子に、一度『貧しさ』というものを体験してもらい、自分たちの生活がどれだけ幸せな…

アプリコット色の子犬

涙を拭いてくれたハナ

結婚して子どもができた後、ペットショップで、トイプードルでアプリコット色の子犬と出会い、一目惚れした。 子どもの環境にも良いと言い訳して家族に迎えた。 元々はチワワ好きだ…